Bacalaoバカラオ(タラの塩漬けの干物)のキャセロール
義母のレシピ
バカラオのキャセロールは、材料も少なくごくシンプルな義母のレシピですが、夫も私も大好きな一品。タラのしょっぱさとトマトソースのまろやかさ、そして赤ピーマンの甘さが絶妙のコンビで、パンと一緒についつい食が進んでしまいます。義母はフィリピンのマニラ出身でロサンゼルスに移住したアメリカ人。義母の父は彼の祖父がフィリピンを代表するビール“サンミゲル”社の創始者(その後買収され現在は無関係)という生粋のスペイン移民、義母の母はスペイン人とフィリピン人のハーフであることから、義母が母親から受け継ぎ現在に至るまで作る料理は、スペイン料理だったり、フィリピン料理だったり、または二つの文化が融合した料理だったりします。このバカラオに類似したポルトガル料理や、スペイン・バスク地方の伝統料理があるのですが、当レシピはどちらとも微妙に異なる家庭料理です。
バカラオとカトリックの食習慣
実はバカラオは、スペイン、ポルトガル、イタリア、フランス、そして中南米などのカトリック文化圏では馴染みの深い魚です。カトリック教会では、Ash Wednesday(灰の水曜日)からEaster(復活祭)の前日までの40日間をLent(四旬節)と呼び、元来その期間中鳥獣の肉、卵、乳製品を避けるべしという規定があり、魚を食べたと言います。現在ではAsh Wednesdayとキリストが十字架にかかったGood Friday(聖金曜日=Lent期間中最後の金曜日)のみ、もしくはAsh WednesdayとLent期間中の毎週金曜日にその制限を適用するように勧められています。その習慣から、このバカラオがLent期間中に食べる伝統的な魚となり、様々な料理に用いられることになったようです。現在私が住むイタリアでも、年間通してバカラオ料理をメニューに取り入れているレストランが多いのではないでしょうか。敬虔なカトリック教徒である夫の実家では、Ash WednesdayかLent期間中の金曜日には必ずこのバカラオのキャセロールが登場しますし、それ以外の時も普通に家庭料理として供されています。
材料(約4〜5人分)
- タラの干物または塩漬け 400グラム:干物であれば24時間、塩漬けであれば5〜8時間冷水に漬け込み塩抜きする。干物の場合は、塩抜きの際4〜5回水を取り替える。タラの塩加減は多すぎでも少な過ぎても美味しくないので塩抜きの際注意する。
- トマト(缶詰または生) 500グラム:缶詰の方がソースを作りやすい。
- トマトペースト 大さじ1(味を見ながら適量)
- にんにく 3かけ:みじん切りにする。
- 砂糖 ひとつまみ
- ローリエ(ベイリーフ/乾燥月桂樹の葉)一枚
- ジャガイモ 4〜5個:厚み5ミリ程度の輪切りにする。
- 玉ねぎ 1個:スライスする。
- 赤ピーマン 2個:コンロの上か調理用のバーナー(トーチ)でローストし(炙り)、冷めたら食べやすい大きさにスライスする。
- フレンチバゲットまたはお好みのパン
補足(1):タラの干物が手に入らない場合は、塩漬けで代用して下さい。干物は欧州系食料品店で入手可能です。ワシントンDC近郊では以下の食料品店で売っていました。
European Foods
2700 Pershing Dr. , Arlington, VA 22201
補足(2):赤ピーマンは、すでにローストされた瓶詰めの物を主に輸入食料品店で入手出来ます。アメリカではTrader Joe’s やWorld Market 等で購入可能です。(一番のお勧めは 「Mazzetta Roasted Bell Peppers」で、World Market にありました。)
作り方
- オーブンを350度(華氏)/180度(摂氏)に予熱しておく。
- 塩抜きしたタラを鍋に入れ、タラが崩れないように注意しながら水を入れ茹でる。お湯が沸騰した時点ですぐに鍋を火から下ろし冷ます。冷めたら、タラの皮と骨を取り除き食べやすい大きさにほぐす。タラを茹でたお湯は捨てないでとっておく。
- 鍋にトマト、トマトペースト、にんにく、砂糖、ローリエを混ぜ入れ火にかけソースを作る。トマトがしっかりソース状になり、味が落ち着いたら火を止める。ローリエはソースを使う前に取り除く。
- 2.でタラを茹でた水を使いジャガイモと玉ねぎを半茹でにする。最後にオーブンに入れて焼くので茹で過ぎない様に注意する。
- キャセロール用の耐熱皿を用意し、3.で作ったトマトソースを底に塗る。その上からジャガイモ、玉ねぎ、タラの順に重ねて行く。もう一度トマトソースから同じ順序で繰り返し重ね、最後に赤ピーマンをトッピングする。
- 5.を1.で予熱しておいたオーブンに入れ、20分程度焼いて出来上がり。パンと一緒に召し上がれ!
東京都出身。大学卒業後数年間の社会人生活の後、留学のため渡米。15年前からはワシントンDCを拠点に海外を転々し、現在ミラノ(イタリア)在住。これまでハノイ(ベトナム)、ブエノスアイレス(アルゼンチン)、福岡、イスラマバード(パキスタン)に住んだ経験がある。