特集「女性のリーダーシップ」:日本における女性の社会進出-個人的体験から
様々な調査で、企業における日本の女性の活躍(賃金格差や役員の数など)は、世界に後れをとっていると評価されており、実際どのような現状なのか、あらためて興味をもたれる方も多いと思います。私が勤務する会社は、典型的な日本企業ではないと認識しており、一般化はできないのかもしれませんが、入社から現在まで、企業における女性の活躍について考えたことについてご紹介したいと思います。
性別を意識することなく働ける環境に恵まれた入社当時
私は、男女雇用均等法が成立した翌々年の1988年に日本の電機メーカーに就職しました。入社する前から、均等法以前から女性がばりばり活躍している会社だと聞いていましたし、実際、私が配属された部署では、係長クラスの女性が、欧州委員会の官吏と喧々諤々折衝する仕事をしていたという話を聞き、感慨深く思ったことを記憶しています。
実際入ってみると、格別、女性の活躍のためのかけ声があるわけではありません。象徴的だったことが2つありました。一つは入社直後のハプニング。私は事情により配属が遅れたのですが、先に配属されていた新入社員の男女が、朝一番に出社し、部員全員の机を拭いていたため、私もみんなに習って行っていたところ、ある日早く出社してきた部長に見つかり、「何をやっている!机をふく仕事をするために会社は君たちを雇ったわけではない。すぐさまやめるように!」とこっぴどくしかられたのです。
もう1つは、この会社では、オフィス内にお茶を自由に飲むことができる給茶機が備え付けられていたことです。これは経営トップの指示で導入されたとのことで、社員が好きなときにお茶が飲めるようにし、女性がお茶くみをする習慣をなくそうというものでした。いずれも、男女関係なく社員全員に、本来の業務以外のことに煩わされずに仕事をしてほしいという、合理的な考えに根差してのことだったという点が特徴的だと思います。
会社全体が同じ状況ではなかった
このように、そもそも女性を特別視することのない環境の中で、入社1年目から1人で海外出張を経験し、Challengingな仕事にあたる機会にもめぐまれ、まったく男女の差を感じずに仕事に邁進する日々を過ごしました。しかし、入社して13年目、2001年ごろ、部長だけが集まる会議場に入ってびっくり。そこは背広姿の男性で埋め尽くされていて、女性の姿をみつけるのは本当に大変でした。
技術系の会社のため、特にエンジニアを中心に女性の社員数がそもそも少ないことは理解していましたが、ここまで女性の管理職が少ないとは思っていませんでした。その後、社内でダイバーシティを推進する取り組みが始まり、自分もその活動に参加する機会があり、より会社全体の様子がわかるにつれ、上司によって、部署によって、状況は異なり得ることを知り、社内の推進滑動の重要性を理解するに至りました。
あらためて意識した入社当時の環境の特徴とは
ダイバーシティ推進活動に参加したことで、あらためて、入社当初自分がいた部署は、なぜ女性の機会均等といった掛け声と無関係に女性にとって働きやすい環境だったのだろうかと、振り返ることがありました。おそらく次のような特徴が、働きやすさと関連しているかもしれないと思っています。
まず、環境面としては、私が当時配属された頃、特に自分たちより上の世代を中心に、全体として、個性的な人や多様なバックグラウンドを持った方が多かったように思います。特に、海外で育ったり、生活をするなど、異なる文化に触れてきた人がとても多かったです。また、仕事を進める上での指向性として、正確なFact Findingに基づき、ロジカルな思考をもって、上下関係なくしっかりと意見をし、議論することが重要視されていました。更に際だって特徴的だったこととしては、仕事に真剣に取り組む姿勢は当たり前の大前提として、男女ともに、プライベートの時間(家族との時間や様々な趣味や遊びの時間)を大事にする人たちが多かったということです。
つまり、私のまわりにあった、1)多様な人材を包容する環境、2)客観性を重視し、対話や理にのっとったオープンな仕事の進め方、3)プライベートを大事にする傾向、といった特徴が、結果的に女性にとって仕事がしやすい環境となっていたのではないかと分析します。
上記のような経験により、私自身は、ダイバーシティ推進活動においては、女性活躍推進を直接的に行うことも大事ですが、女性に限らず、個性の違い、外国人や、障害者、LGBTQ等々を含めた、全般的な多様性の推進や、男女ともに子育てや介護、趣味や社会参加などプライベートを大事にする文化の醸成と、プライベートの様々な困難を乗り越えやすい環境作りなどが、翻って女性が活躍し易い環境づくりに資するものだという思いを強くもっています。
社会の今・会社の今・これから
社会の現状は、我々を自然と多様性を重視する方向に、誘ってくれているように思います。特に資源、人口など、限られたリソースしかない日本では、外国との連携が不可避で、日本人が外に出ていく、あるいは外国の方を日本に受け入れるということが必須になっていると思います。また、コロナ禍の影響は大きく、以前よりプライベートの充実に人々の意識が向くようになりましたし、在宅勤務やリモートワークを可能にする技術の進展がありました。こうした変化を踏まえ、女性に限らず国内外の多様な人材にとって働き易い環境を提供できない企業は、市場から追い出される時代のような気がします。
自分の会社では、まだ女性の管理職が出やすい業務分野と、そうでない分野の偏りはあるものの、女性のリーダーや管理職は増加傾向です。役員については、長らく男性のみの時代があり、その後、外部から役員候補となる女性を招聘した時代を経て、生え抜きの女性の役員が出るようになってから、もう十数年たちます。まだ十分とはいえず、進化の余地がありますが、上記のような社会の変化による下支えもあり、女性の活躍は自然と進むのではないかと思います。
日本で、初めて女性の首相が誕生しましたが、昨今は、政治・行政、ビジネス、学術、芸術分野など、幅広い分野の一線で活躍する女性を目にすることが増えていて、女性の首相の誕生自体は、驚かなかったというのが正直なところです。 高市首相には、米国議会で働く経験をされたり、女性というマイノリティとして政治の世界でがんばってこられた方だからこその視点・経験を活かして、日本の文化を大切にしつつも、日本の活力の基盤となる、多様性・個性を大事にする社会づくりの旗を振っていただきたいと願います。


