イタリア北部のサマーメニュー
去年の夏から縁あって、パリ、ニューヨークに次ぐファッションの都、イタリアのミラノに住んでいる。とはいえ、ミラノマダムを気取るには立つ土俵があまりに違い過ぎるし、イタリア語の習得も全く進歩しない。せめてイタリア料理だけでも学んで帰りたいと思いつつ、ミラノ生活も9ヶ月が過ぎた5月、初めて料理教室のクラスを受ける機会があったので、その時のメニューを紹介しよう。(1)ズッキーニペストのリングイネパスタ(Linguine con Pesto di Zucchine)、(2)仔牛のツナソースかけ (Vitello Tonnato) そして(3)スブリソローナパイ (Sbrisolona ai Frutti Rossi)の三品で、イタリア北部の夏の定番メニューなのだそうだ。皆さんよくご存知のように、イタリア料理の構成は、アンティパスト(前菜)で始まり、プリモピアット(第一の料理、パスタやリゾットが中心)、セコンドピアット(第二の料理、肉や魚のメイン料理)と続き、最後にドルチェ(デザート)で締める。ちなみに、コーヒーや紅茶などは食後の飲み物であり、通常はデザートと一緒にサーブされることはない。コースを全て注文するとかなりヘビーになるので、ミラノの女性たちはプリモかセコンドを一皿だけ注文するようである。
ズッキーニペストのリングイネパスタ(Linguine con Pesto di Zucchine)
パスタはイタリア人の食生活の中で欠かせない食材であり、全国で食べられている物もあれば、各地域独特の物もあり、すべて含めれば何百種類もあるという。リングイネは太めの麺で、イタリア全土で食べられているが、その発祥はリグーリア海に面した都市ジェノヴァ(イタリア北西部リグーリア州の州都)だという。ジェノヴァと言えば、バジリコを使ったパスタソース「ペスト」の本場で、リグーリア産のバジリコが使われた物だけが「ペスト ジェノヴァーゼ」の名称で呼ばれるという。今回紹介するズッキーニペストは、バジリコの代わりに旬が夏のズッキーニを使う。
材料:6人分
- リングイネ 450グラム
- ズッキーニ 600グラム
- ミントの葉 25枚
- にんにく 1かけ
- アーモンドスライス 100グラム
- パルメザンチーズ 120グラム
- エキストラ バージン オリーブオイル 150ミリリットル
- 塩 コショウ お好みで
作り方
- アーモンドスライスをフライパンで煎る。この時フライパンを揺らしながらアーモンドを動かす。
- ズッキーニを洗い、縦3等分に切りそれを3等分に切るが、真ん中の種の部分は使わない。切る大きさは厳密でなくて良いが、後でブレンダーに入れる事を考慮する。切ったズッキーニを塩を入れたお湯で数分間茹でる。この湯は後で使うのでとっておく。
- ズッキーニとリングイネ以外の材料をブレンダーにかけて混ぜ、ペストソースを作る。アーモンドスライスは飾り付け用にいくらかとっておく
- リングイネパスタをズッキーニを茹でたお湯で茹でる。パスタが茹で上がったら、ペストソースとよく混ぜ合わせ、オリープオイルを大さじ数杯と塩コショウで味付けし、煎ったアーモンドスライスで飾り付けする。
仔牛のツナソースかけ (Vitello Tonnato)
2006年冬季オリンピックが開催されたトリノが州都であるピエモンテ州を代表する料理で、冷たく(室温程度)さっぱりしていて暑い夏にぴったりのメニューでしょう。
材料:6人分
- 仔牛(なるべく若いもの)のお尻の部分 600グラム
- お湯 2リットル
- 玉ねぎ 1個
- 人参 1本
- セロリ 1本
- クローブ 1個
- ローリエ 1枚
- タイム 枝1本分
- セージの葉 3〜4枚
- ホワイトワイン グラス半分
- 塩 胡椒
ツナソース材料
- オイル漬けのツナの缶詰 150グラム
- 自家製マヨネーズ:室温の卵1個、オリーブオイルやベジタブルオイル100グラム、レモン汁適量をブレンダーで混ぜ合わせた物。
- オイル漬けのアンチョビー 4切れ
- 塩漬けケッパー 大さじ1杯 (ツナの風味を引きたてる)
- レモン汁 適量
- ホワイトビネガー 少々
- 塩 胡椒
作り方
- 鍋に2リットルのお湯に上記の野菜、ハーブ、ワイン、塩胡椒を入れ沸騰させ、10分間沸騰させたら、仔牛を静かに鍋に入れ蓋をして弱火で約1時間煮込む。煮込む時間は肉の重さによって調節する。
- 仔牛を約1時間煮込んだら、鍋から取り出し皿の上で冷ますが、その際もう一枚の皿で重しをする。
- 上記の材料でマヨネーズを作る。
- ブレンダーでツナとレモン汁を混ぜたら、ビネガー、アンチョビー、ケッパー、胡椒を加える。
- 4にマヨネーズをゆっくり加え、味を調節する。
- 仔牛を薄くスライスし大皿に並べ、上から5のツナソースをかける。
スブリソローナ・パイ (Sbrisolona ai Frutti Rossi)
最後のデザートは、州都ミラノを擁するロンバルディア州、マントヴァ地方からの伝統菓子、スブリソローナ。食べるとボロボロと崩れ、カリカリした食感が楽しめ、甘すぎるお菓子が少々苦手な私でもとても美味しくいただいたパイだ。教室では季節の”Fruitti Rossi”(赤い色のフルーツ)であるイチゴを詰めたが、ラズベリーやブルーベリーなど他のフルーツでも代用できる。
材料
- ふるいにかけた小麦粉 350グラム
- アーモンドスライス 300グラム
- グラニュー糖 300グラム
- コーンミール(トウモロコシ粉) 250グラム 引きが細かいもの。ポレンタ用の粉は引きが粗いので適さない。
- バター 300グラム
- 卵の黄身 3個分
- レモンの皮 2個分
- バニラパウダーまたはバニラビーンズ
カスタードクリーム ”クレマ パスティッチェーレ” 材料
- 牛乳 250グラム
- でんぷん 20グラム
- 砂糖 25グラム
- 卵の黄身 2個分
- オレンジ または レモンの皮のすりおろし 1個分
フィリング(詰め物)材料
- イチゴなどの赤い果物(お好みで) 400グラム
- 砂糖 30グラム
- レモン 1/2個
- 飾り用のミントの葉とラズベリー
作り方
- カスタードクリームを作っておく。上記の材料を鍋に入れ、火にかけて混ぜ合わせる。よく混ぜあわさったら火から降ろし冷ます。
- フィリングを作る。イチゴを小さく切り、フライパンで砂糖、レモンの皮、水と共に5分間火にかけキャラメル状にする。
- パイ生地を作る。小麦粉等上記の材料をボールの中で手で混ぜ合わせ、不均一な生地を作る。
- クッキングシートを敷いたタルト型(直径約24センチの大きさ)に生地の半分を入れる。その上にカスタードクリーム流し入れ、冷めたイチゴを加える。最後に残り半分の生地で蓋をする。
- あらかじめ摂氏180度に熱しておいたオーブンで45分間焼く。
- オーブンから取り出したら冷ましてからアイシングの砂糖をふるい、イチゴをミントの葉で飾りづけする。
<料理教室>
Atelier dei Sapori, Milan, Italy
<参考文献>
平松玲「イタリア美味遺産:郷土料理を食べ尽くそう〔ミラノ→フィレンツェ篇〕」(2005年、柴田書店)
東京都出身。大学卒業後数年間の社会人生活の後、留学のため渡米。15年前からはワシントンDCを拠点に海外を転々し、現在ミラノ(イタリア)在住。これまでハノイ(ベトナム)、ブエノスアイレス(アルゼンチン)、福岡、イスラマバード(パキスタン)に住んだ経験がある。