日本語教育の現場から

習字に挑戦する生徒たち

習字に挑戦する生徒たち

スーツケースを転がしながら、恐々とニューヨークのペンステーション駅に到着してから、約20年経ちました。日本では高校生に「本当に」使える英語を教えることを目標に日々の勤務に追われる生活を送っていましたが、大学院留学がきっかけでその後アメリカに移り住むことになり、現在はアメリカの高校生に「使える」日本語を教えることを目標に毎日奮闘しています。メリーランド州の公立高校の教員として日本語を教えるようになり5年目を迎え、アメリカの学校システムで日本語を教えている先生方が直面している課題や日々のご苦労がよく理解できるようになりました。外からでは分からない日本語の教員が抱えている課題や、それを克服するために現場ではどのような努力をしているのかご紹介したいと思います。

高校で日本語を学ぶ意義

パーティーや通勤途中の雑談で、公立高校で日本語を教えていると話すと、「アメリカの学校で日本語を教えているのか」とびっくりされることがあります。アメリカの中学・高校生が学ぶ外国語というとほぼスペイン語かフランス語で、日本人が少なく、アメリカ人を大量に雇用している日系企業や米軍基地があるわけでもない地域では、日本語を学びたいという生徒がいるということが驚きなのかもしれませんし、保護者の立場からすると日本語を学ぶ意義が直ぐにピンとこないのでしょう。私が勤務する高校はそのような地域にあり、日本語を履修する生徒を確保するのが毎年大きな課題となっています。全米の中には私と同じ課題を抱えている教員は多く、日本語プログラムの継続のためにそれぞれが多大な努力を払っているだろうと想像されます。

日本語プログラム継続のために

私が日本語プログラム継続のために心掛けていることは、教室内外で実際に日本語を使える機会を提供することです。具体的には、日本への研修旅行を提供したり、日本から研修旅行でワシントンDC地域を訪問する生徒の学校一日体験を受け入れたり、教室に日本人のスピーカーやALT(日本で英語を教えて帰国したアメリカ人)、ボランティアの方々を招いたり、ワシントンDC地域の日本関連のイベントに参加させたりしています。今年は本校初ジャパンボウルへも参加します。また、オープンハウスや学校新聞、朝のアナウンスメント等で宣伝をし、さらには中学校に出向いてそういったイベントについて紹介し、日本語を履修するようにアピールすることも大切です。ただ、生徒の側に日本に対する興味が全くなければこのような努力が実を結ぶ可能性は極めて低いだろうと思われます。日本人が少なく、日本企業もない地域では、日本のアニメが中学生の間で大変な人気を呼んでいることが日本への関心に繋がっていることは間違いなさそうです。その漠然とした興味を日本語履修へ結びつけるのが日本語教員の挑戦で、生涯を通じて日本ファンになってもらうことが日本語教員の役割なのだと感じています。

小学生の頃、日本と世界の架け橋になりたいと考えていました。その後、日本語への理解よりも英語の習得ばかり優先させていた私が、日本語を教えることを生活の糧にするようになったというのはどこか皮肉ですが、両言語を教えたからこそ2つの言語の共通点と相違点をより分かりやすく説明できるのではと思っています。ただ、生徒にとっては日本語を「楽しむ」ことが一番の関心事です。日本語教師の挑戦は今年も続きます。

なお、2019年の春号「応援したい、日本語を学ぶアメリカの高校生」で、昨年夏の日本旅行に関する記事を掲載して頂き、多くの方より旅行への支援を頂きました。心より感謝申し上げます。(帰国後こちらのページに生徒のエッセイを追加しました)

 

 

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