ウクライナの子どもたちと折り紙

Arrival Centerでのボランティア

Arrival Centerでのボランティア

戦争が始まる

2022年2月下旬ごろ国際機関で働く主人から、ロシアとウクライナの状況が悪化する可能性があるのでキーウの現地事務所の職員がウィーンに退避していると聞きました。

その後、2月24日にいよいよ戦争が始まり、ウィーンに住む私たちにも戦争の影響が、すぐ身近に感じられるようになりました。主人のところには同僚から家族や親戚がウィーンに退避してくるので受け入れてほしい、国境まで迎えに行ってほしいなど、連絡が頻繁に入ってきていました。またSNS でも難民の方の受け入れ先を探す記事や、支援する活動が次々とポストされていました。息子たちの通う学校でも難民の子どもたちのためにぬいぐるみや生活必需品を集める活動や、寄付を募って支援をしようという動きがありました。子どもたちの学校では先生から戦争についての話がありましたが、インターナショナルスクールに通う息子たちの友だちにはウクライナ人家族もロシア人家族もいるので、私たちからは戦争が始まったことについては特に慎重に息子たちに説明しました。

近所にウクライナから避難をしてきた家族がいて話を聞くと、「キーウから何日もかけて車を運転して、ようやくウィーンに辿り着いた。とても怖くて戦争が起きているなんて今でも信じられない。両親、兄弟、主人を残してきたのでとても心配している」と涙ながらに話していました。娘さんが2人いたので少しでも心が和らぐようにと、ぬいぐるみをプレゼントしたり、ケーキやパンを買って届けました。日本で生まれ育ってきた私には想像を絶する状況に何と言葉をかけていいのかわからず、言葉に詰まりました。

ウィーン中央駅の様子

3月15日 ウィーン中央駅

3月15日 ウィーン中央駅

毎日ニュースで戦争のこと、難民のことを見るたびに、何か自分にできることはないかと自問する日々を送っていました。ある日、居ても立っても居られずに、ウクライナからの難民が多く到着するウィーン中央駅に行きました。その際、アメリカのアーリントンに住んでいた時に折り紙の活動を通して知り合った方が、以前アフガニスタンの難民の方に折り紙を教えたという話が頭をよぎり、もしかして私も何か出来るかもしれない、そう思いとりあえずバックパックに折り紙を入れて、駅に向かいました。

駅に着くとそこには長時間の移動で疲れきった人々や子どもたちがたくさんいました。ウィーンは春らしくなっていましたが、ウクライナを出た時はとても寒かったのでしょう、厚手のジャケットにニットの帽子、スノーブーツ。荷物はバックパックだけ。幼い子どもの手をひき、もうひとつの手にはペットをつれている方も。ほとんどの方は滞在先が決まっておらず、ボランティアの方の案内で、近隣のホテルや受け入れのセンターに滞在する手続きを行っていました。

駅では炊き出しが行われていて、食べ物や歯ブラシ、シャンプーやオムツなどの生活必需品が配られていました。その傍らに、テーブルと椅子があり休憩できるスペースが設けられていたので、私はそこで折り紙で机を飾り、子どもたちにコマやハートなどを折って配りました。折り紙のコマはその場で回して遊べるので、とても気に入ってもらえました。2、3歳ぐらいの双子の女の子が泣いていたので、コマを回して見せると直ぐに泣き止み、キャッキャと喜んで遊び始めました。その時、その双子のおばあちゃんが一瞬とても和やかな表情になり、ありがとうとウクライナ語で言ってくれたのはとても嬉しかったです。

Arrival Center でのボランティア

次の日はUkraine Arrival Center に行ってみることにしました。そこは普段はスポーツセンターとして使用されている場所ですが、難民の方の一時的な受け入れ場所となっていて、食事や衣料品などの提供、住まいやウィーンで受けられるサービスの情報収集やメディカルチェックを受けることができる場所です。またキッズエリアでは、子どもたちがおもちゃで遊んだり、クラフトをしたり、ボードゲームやパズルなどが出来るスペースも設けられていました。

私はそのキッズエリアで折り紙を教えることにしました。いくつか折り紙の見本を机に置いておくと、たくさんの子どもたちがやりたいと寄ってきてくれました。子どもたちはウクライナ語、もしくはロシア語を話すので、言葉が通じないのですが、身振り手振りで教えると、子どもたちはとても上手に折り紙を折って、楽しんでくれました。また、興味がある子だけではなく、携帯電話でゲームをしている子や、走り回っていて折り紙に興味が無さそうな子も誘ってみて、折り紙をやらせてみると「楽しい!次はこれが折りたい!」と、どんどん折っていく子どもたちもいて、笑顔になる子どもたちを見ていると私もとても嬉しく思いました。折り紙をするのは初めてという子どもも多いのですが、ウクライナの子どもたちは手先がとても器用で驚きました。

キッズエリアでは子どもたちが自由に遊んだり走り回ったり、なるべく日常の学校や幼稚園にいるような雰囲気でと、ボランティアの方々と明るい雰囲気作りに努めました。一方でキッズエリアの外では家族と電話をしながら涙を流す人、抱き合う人など、絶望の淵にいる難民の方々を目の当たりにして、とても悲しい気持ちになりました。

美しいウクライナカラーのスカーフを身にまとう女の子(左)。手先がとても器用

美しいウクライナカラーのスカーフを身にまとう女の子(左)。手先がとても器用

イースター・ウィークエンド

ボランティアを始めて1ヶ月程経ったある日、10歳と8歳の息子を連れてボランティアに行きました。その日はイースター・ウィークエンドということもあり、子どもたちがたくさんいました。折り紙をしていると子どもたちが集まってきて、到底私1人では教えられない状況になりました。元々折り紙が好きで家でも色々と作っていた息子たちに、手伝ってくれる?と聞くと、初めての経験に戸惑いながらも、10歳の息子は同じ年頃の子どもたちに折り方を見せながら手際よく次々と教え、8歳の息子は紙を渡したり片付けたり、折り紙の見本を他の子どもたちに見せてやってみないかと尋ねたり、色々とサポートをしてくれました。気がつけば3時間、休みなしでずっと折り紙を教えていたので、2人はとても疲れた様子でしたが同時に達成感で満ち溢れていました。実際にウクライナの子どもたちと触れ合うことで、何か息子たちにも気づきがあったかもしれません。

チューリップのブーケをママにプレゼントした少女。このブーケを見て他の子どもたちも作りたいと、この日はたくさんのチューリップを作りました

チューリップのブーケをママにプレゼントした少女。このブーケを見て他の子どもたちも作りたいと、この日はたくさんのチューリップを作りました

受け入れセンターで出会った子どもたち

センターではたくさんの子どもたちに出会いました。犬や猫を折り紙で作りたいと言う子どもも多く、ウクライナに残してきたペットを想い涙する子も。毎日乗馬をやっていたので、1日でも早くウクライナに帰ってその馬に会いたいという子。ウサギの家族を折って、お父さんはウクライナで戦っているんだよという子。青色と黄色のウクライナカラーで何か作りたいという子どもたちもとても多く、子どもたちがウクライナを誇りに思うことがよくわかりました。

また、折り紙を教えたお礼にとキャンディや手作りのアクセサリーをくれる子、手紙や私の似顔絵を描いて渡してくれる子。ありがとうと笑顔でハグをしてくれる子。辛い状況の中でもこの子どもたちの明るさや優しさにボランティアのみんなが元気づけられています。

高校生の女の子が、折り紙を教えてくれたお礼にと私の似顔絵を描いてくれました

高校生の女の子が、折り紙を教えてくれたお礼にと私の似顔絵を描いてくれました

現状

現在ウィーンで難民登録された小学生以上の子どもたちは、午前中に現地校に通い、小学生以下の子どもたちは幼稚園や保育園での受け入れも行われています。子どもたちは学校が終わった後に、Arrival Center にやって来ます。昼食やおやつ、夕食をここで食べたり、ここで出会ったウクライナの友だちと遊びます。現地校では言葉の壁があるので、ストレスも溜まることでしょう。ここではウクライナの子どもたち同志が遊べるので、とてもリラックスして楽しんでいるようです。女の子たちは折り紙を折りながらひたすらお喋り。折り紙をやりたいと何度も来る子、すっかり折り紙をマスターして友たちに教える子、学校で覚えてきたドイツ語を披露してくれる子もいます。

何時間も集中して折り紙を折る子どもたち

何時間も集中して折り紙を折る子どもたち

最後に

1人でも多くの子どもたちが、今日は楽しかったなと思い眠りについてくれればいい。辛い思いを一瞬でも忘れて、笑顔になってほしい。そんな思いで続けてきたボランティアですが約3ヶ月が経ち、約50日間、延べ200〜300人のウクライナの子どもたちに折り紙を教えてきました。戦争によって祖国を追われ、悲しく辛い状況の中でも、ウクライナの子どもたちはここで一所懸命生きています。1日でも早い終戦とウクライナの平和を願い、子どもたちが家族と安心して過ごせる日々が戻ってきますように。これからもボランティアを続けていくことが出来ればと思います。(2022年6月末執筆)

平和の思いを込めて Peace for Ukraine

平和の思いを込めて Peace for Ukraine


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