AI時代到来、安全にAIを使うために
2026年8月現在、米国での一般AI利用率は49%、日本は60%とすでに半数の方がAI を利用する時代になっている。その利用目的の多くは「冷蔵庫の材料で3品作りたい」などの家事のお助けや、「ひとり3,000円以下で新宿駅から徒歩5分で今から5人で入れる店」などのシンプルなものから、「現在の貯金額が500万円で、10年後に5000万円にしたい」などのお金の相談、「2週間頭痛が続いていて、左足が痺れている時の対処法」などの健康に関するものなど、個人的且つ深刻なものまで多岐にわたっている。
米シンクタンクのピュー・リサーチ・センターが2026年2月に行った米国の成人を対象にした大規模調査によると、AIに対する一般市民の不安も高まっているようだ。米国人の多くがAIの進歩は速すぎると考えているようで、この調査では回答者の63%がAIは「速すぎる」ペースで進歩していると答えている。そして、最大の懸念はデータセキュリティだ。回答した米国人の71%がAIによって個人情報の安全性が低下すると考えている。
また、AI大手Anthropic社のCEOやOpenAI社はAI の加速度的な進化をコントロールするために開発のスピードを落とすことを示唆し始めている。
我々一般人がAI の開発スピードやセキュリティ対策に手を出すことはできないが、現在の日常的なAI利用において、個人個人がAIを安全に利用するために注意すべきポイントはいくつかある。
ポイント1 個人情報をAI に入力しない
AIに入力したデータは、基本的にAIの追加学習やサービスの改善に使用される。また、その情報が漏洩し個人が被害に遭った例も少なくない。そのため、以下のような個人情報は入力しないようにすることが大切だ。
- 氏名、メールアドレス、電話番号、住所など
- パスポート番号やSSN など
- クレジットカード番号、銀行口座情報
また、以下の様な情報も入力しないことが望ましい。
- 病歴・診断名・服薬情報
- 性的指向・性自認
- 思想・信条・宗教
- 犯罪歴
ポイント2 ハルシネーション(幻覚)の回避
AIは非常に賢いが、完璧ではない。出力された内容をそのまま使うと、思わぬトラブルに発展することがある。法律関係の情報や医療関連の情報を鵜呑みにして甚大な被害になった事例も報告されている。AIによる架空の法的引用が裁判に提出された事例は世界で1,000件以上が確認されており、ファクト確認を怠ったために莫大な制裁金を課された例もある。必ず自分の目で、信頼できる一次情報(公的機関のサイトや公式資料)と照らし合わせてファクトチェックを行うことが必要だ。
ポイント3 著作権や知的財産権の侵害に気をつける
AIが生成した文章や画像が、既存の著作物(他人のイラスト、記事、プログラムなど)と酷似している場合、意図せず著作権侵害になってしまうリスクがある。2025年6月、ウォルト・ディズニーとNBCユニバーサルが、画像生成AI「Midjourney」を相手取り、代表的なキャラクターの画像を無断で生成・配布されたとして米国の裁判所に提訴した。ハルシネーション被害を避けるときと同様に必ず画像などの著作権確認が必要だ。
ポイント4 AIの倫理を疑う。AIからのアウトプットに思考を左右されない
AIを利用しての文書作成はかなりのスピードで伸びている。しかし、偏見や差別的な表現が含まれていないかを確認することも大切だ。AIは学習データの影響を受けるため、意図せず偏った表現を生成する場合がある。そしてその文章により、社会問題へのユーザーの意見を無自覚のうちに変えてしまう可能性があることを米コーネル大学の研究チームが発表した。これもポイント2、ポイント3同様にAIの出力情報の再考が必要だ。
ポイント5 AIを利用した詐欺やなりすまし被害に遭遇しない
米国における2025年のAI関連詐欺(なりすましや偽情報・音声クローンなどを含む)の被害額は、約8億9,300万ドル(約1,440億円)に達した。被害の内容は以下のようなものだ。
- 投資詐欺(被害額の大半を占める、約6億3,200万ドル)
- 音声クローン(「オレオレ詐欺・孫を装う電話」など)
- ディープフェイク画像・動画(政府機関や、有名人)
FBIや専門家は、AI技術の低コスト化と高精度化により、詐欺のメッセージや音声が本物と見分けにくくなっていると警告している。
これを避けるための方法をいくつかご紹介する。
まず、“事実確認を行う”ことだ。投資被害の多くは巧みに大企業の名前を語ることが多い。したがって、その企業への別連絡を取ることが重要だ。
次に“家族間での合言葉”を決める。特に離れて暮らしている家族などは日常の様子が分かりづらいため、“合言葉”を決めて連絡を取り合うことが解決の一手となる。
次に“過度にSNSに情報を提供しない”ことだ。AIはこの個人情報を利用して思考や行動などを学習し、詐欺やなりすましの攻撃に利用する。
最後に重要なのは“違和感”だ。著名人や政治家がこの様な発言をするのか?とか自分に連絡が来るのはおかしくないか?など自分の違和感と照らし合わせてほしい。
ポイント6 AIへ過度な依存をしない
1993年にIntelがPentiumというチップを発表したときに、“スピード”と“賭け事”は一度ハマったらやめられないと言われたことがある。AIはこれに続く“やめられない”ものになりつつある。効率化のためにAIを使うのは大いに歓迎だが、依存は自分の思考能力や感性、創造性を著しく低下させる可能性がある。そしてメンタルヘルスにも影響する。ハーバード大学の精神科医ロイ・パーリス博士らが主導し、2026年に「JAMA Network Open」に掲載された全米調査では、AIを最も頻繁に使用する人は、非使用者と比べて、抑うつ症状、不安、いら立ちの割合が有意に高かった。少なくとも中等度のうつを示す確率は、AIを毎日使う人で30%高かった。
ポイント5でも紹介したように、AIを利用した詐欺被害に遭わないためにも自分の感性を大切にして、依存を少なくすることが重要だ。
安全にAIを利用するためにまとめ
以上AI を安全に利用するためのポイントをまとめてみたが、私は最後の“依存しない”が一番重要であると考えている。AIはあくまで“サポーター”であり、あくまで主体は自分である。自分の時間を効率よく使うためのサポーター、自分の理解者・相談相手など、関係性は様々であるが、人としての感性や人としての時間を大切にしてAIを大いに活用してほしい。
女性とAI
最後にWJWNへの寄稿ということで、女性とAIの関係について考えたい。現在も米国では、69%( LinkedInの調査)、日本では86.6%(令和6年厚生労働省資料)の女性が子育てや介護のためにキャリアから離れている。今まではいったん休職してしまうと学びを継続する機会がかなり限られていた。セミナーに参加をするとか、ある程度の時間を確保してPCに向かうなどして学ぶことと、介護や育児を両立させることはなかなか難しかった。しかし、AIはこの女性たちの大きな応援団になると考える。家庭での子育てや介護の隙間時間を利用して、家事をしながら音声を利用して学ぶ機会が与えられると考えている。また、以前のように学習の際に対面するのが“人”であれば、“こんなこと質問してもいいのかしら?”、“これを聞いたら下に見られるかも?”などの心理的なバリアがあったが、AIではもっと気軽に聞けるようになった。そしてキャリアを離れていた数年の間にAIを使って学んだことが仕事へのスムーズな復帰を助けるだけでなく、復帰した後に会社にとっての大きなメリットとなる。企業が会社の発展のために、あえて外部のコンサルティングを雇うことがある。これは社内では見えない気づきなどを俯瞰的に外部から見てもらうことが目的の1つとなっている。企業のこの様な成長の意志に、復帰する方の“離れていたからこそ見える”発想は大いに貢献できると考えている。
AI にコントロールされるのではなく、AI を自分のサポーターとして利用する時代が今来ている。そして、キャリアの中断をAIによって自分の武器として使うことができる。
静岡県湖西市出身。静岡大学工学部卒。公認情報システム監査人(Certified Information systems Auditor)、ハクビ京都着物学院教授。外資系IT企業のSEとして勤務後、





