国際結婚を考える会 日本人の外国籍取得に関するアンケート調査結果

はじめに

海外で暮らす日本人が避けて通れない永住権や国籍の問題は、私たちの人生や日常に深く関わってきます。27年間米国で暮らした私も、10年ほど前に米国籍を取得し、日本国籍自動喪失の当事者となりました。

日本国内では国籍についての理解が広まっていません。そのため、国籍に関心のない方々や、重国籍(二つ以上の国籍を持っている状態)を認めようとしない国会議員など(保守派で海外居住経験もなく、当事者の気持ちが理解できないケースが多いようです)に、海外邦人の声を届けたい、日本の国籍法のため多くの方が不安定な生活を強いられている現状を伝えたいという思いから、海外在住の皆様にアンケート調査を実施し、1,800名余りの方々からご回答を頂きました。ここで、回答結果を皆様と共有したいと思います。

回答から、国籍法のために苦労されているだけでなく、お子さんの国籍についても懸念されている方、出生時から重国籍を持つお子さんが、22歳になった時点で国籍選択宣言をし、どちらかの国籍を放棄する必要があると誤解している方が多いことが分かりました。日本国籍を選択した場合、もう一方の外国籍の放棄は努力義務であり(日本国籍法第16条)、重国籍のままでいても法律違反にはなりません。現在、合法的に重国籍を持つ日本人は100万人ほど存在すると推定されています。

国籍法11条1項は「日本国民は、自己の志望によつて外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う」という、外国籍を取得した日本人の日本国籍を自動喪失させる法律で、この条項が適用される人は重国籍になることはありません。14条は「外国の国籍を有する日本国民は、外国及び日本の国籍を有することとなつた時が二十歳に達する以前であるときは二十二歳に達するまでに、その時が二十歳に達した後であるときはその時から二年以内に、いずれかの国籍を選択しなければならない」という内容で、前半は未成年の時に出生国の国籍を取得して重国籍になった人など、後半は成人になった後に婚姻など本人の意志に関係なく外国籍を付与され重国籍になった人や、帰化などで日本の国籍を取得した後も引き続き従前の外国の国籍を保有している人などが対象です。前述の通り、やや誤解を招く条文ではあるものの、日本国籍選択により外国籍を放棄「させる」法律ではありません。また、国籍選択宣言をしないまま二重国籍を維持している日本人も数多くいます。

日本人の外国籍取得に関するアンケート結果

ここからは、2021年3月から7月にかけて海外在住の日本人の方を対象に実施したアンケートの結果をご紹介します。冒頭でも述べた通り、このアンケートは、居住国の国籍を取得していないことにより不安定な生活を強いられている方や、居住国の国籍を取得し、日本国籍を自動喪失した方の直面されている問題などについて、直接お声を聞く目的で実施しました。回答者の居住国・居住年数・年代は、以下の表に示した通りです。「その他」の居住国はカナダ、フィンランド、イタリア、スペインなど、ヨーロッパ、アジア、中東やアフリカなど多くの国の方から回答を頂きました。回答者の約9割は女性で、30代〜50代、外国居住年数10年〜30年の回答者が中心でした。

アンケート回答者の居住国

アンケート回答者の居住国

アンケート回答者の年代

アンケート回答者の年代

アンケート回答者の外国居住年数

アンケート回答者の外国居住年数

外国在住の理由 (複数回答可) で最も多かったのは、ご家族の関係(約80%)でした。仕事、あるいは家族と仕事両方を理由に挙げた回答も見られました。また、日本が住みづらい、東日本大震災の原発事故のため子供を育てるのに適していない、同性婚が認められていない日本では結婚できないため、といった回答もありました。

国籍法11条1項について知っていたかを尋ねた質問では、知っていたと回答された方が88%、知らなかった方が12%でした。

居住国の国籍を取得しない理由、及びそれによって生じる問題

アンケート回答者のうち、居住国の国籍を持っていない方は約90%で、そのうち約80%が、居住国の国籍を取得しない理由として、国籍法11条1項により日本国籍を喪失してしまうからと回答されました。

日本国籍を喪失したくない主な理由(複数回答可)は以下の通りです。多くの方が国籍は自分のアイデンティティーであると感じ、将来事情が変わって帰国する場合に備えて国籍を維持したいと考えていることが分かりました。また、戸籍制度がある日本で、生まれた時から記載されていた戸籍から名前が消されることに抵抗を感じている方もおられることが分かりました。日本国籍を喪失したくない理由として多くあげられたのは次のようなものです。

  • 将来事情が変わった場合日本に帰国して住みたい。78%
  • 日本国籍は日本人のアイデンティティーである。63%
  • 居住国と日本双方の国籍を持つ子どもの親として日本国籍を喪失したくない。49%
  • 戸籍から自分の名が消されることに抵抗がある。35%
  • コロナ禍で、日本国籍がないと帰国が困難になる。29.8%

更に、居住国の国籍を持たないために起こる主な問題(複数回答可)としては、以下の点が挙げられました。

  • 利便性の欠如(例:ビザの更新、職業上の制限など)73%
  • 市民権がないために生じる問題(例:選挙権などがないこと) 62%
  • 身分保全上の問題(例:長期出国により永住権の維持が困難になる不安)59%
  • 家族統合上の問題(例:配偶者や子供と国籍が違うために問題が起こる)21.8%

また、不動産購入、教育ローン、高齢者サービス、研究費申請などにおいて、居住国の国籍がないために不利になることも指摘され、配偶者の死後、国によってはビザが失効するケースや、相続に関わる問題など、様々な不安があるというコメントもありました。こうした要素に加えて、人生の半分以上居住しているにも関わらず、国籍がないために外国人扱いされて不利な立場に置かれたり、家族の中で自分だけが異国の人間であることが心理的不安に繋がったりするケースがあることも分かりました。

居住国の国籍取得に至った理由

一方で、居住国の国籍保持者に対しては、国籍を取得した主な理由を尋ねました。ここでの回答の多くは、国籍非保持者が問題として挙げたことと共通していました。

  • 市民権(例:選挙権などが得られる)54%
  • 利便性(例:職業、資格取得など) 51%
  • 身分保全(例:居住国で安定した生活が送れる)48%
  • 家族統合 35%

この他、遺産相続、不動産、税金、子供の進学などに有利、居住国の国籍を持たない配偶者の永住ビザ取得のため、居住国は自分の国という意識がある(日本に帰って住む気持ちはない)といったコメントも見られました。

国籍問題についての意見

回答者の皆様がお寄せくださった国籍問題に関する全体的なご意見をいくつか共有します。

  • 重国籍容認により、少子化や優秀な人材の海外流出に歯止めをかける可能性がある。多様性を広め、人と違う事を理由に起こるいじめ発生予防への貢献など、日本のメリットになる点が考えられる。
  • 日本では少子化、不登校、引きこもりなどの問題があり、将来の納税者数減少が懸念される。将来高齢化社会に困る日本を助け、少しでも納税者を増やす試みとしても、重国籍を認めるべき。
  • 少子高齢国の日本で将来的に移民を増やす場合、多重国籍を認めることは外国籍移民のアイデンティティを守る上でも必要な議論。

また、複数国籍を持つ子供や海外で育った日本人の子供に関するコメントも数多くありました。記事の冒頭でもご説明したように、出生時から重国籍であれば、日本国籍を保持できる子どもは多数いるはずです。海外で育った子どもたちは、日本を外から見ることができることから、今後より一層グローバル化が進む中で、日本の将来を担う貴重な存在です。彼らが成人し、日本に帰国した時、海外で育った彼らも住みやすい、多様性を認める社会へと発展させて行くことが重要であると考えます。

最後に

国際結婚を考える会では、一般国民の方に、国籍法11条1項により海外在住の日本人が直面する問題を知って頂くための手段を検討しています。アンケート結果とともに、当事者のご意見や、抱えている問題についても発信することにより、国籍法11条1項がいかに海外在住の日本人、そして日本という国そのもののデメリットになっているかについて、より広く知っていただくきっかけになるのではないかと考えます。

この記事をお読みくださった皆様の中に、海外在住とそれに伴う国籍に関するご経験やご意見を共有して頂ける方がいらっしゃいましたら、ぜひお知らせください。

 

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