ユダヤ料理: ブリスケット(Brisket)とラトケス(Latkes)
ユダヤ人の夫と結婚して15年近く経ちます。ユダヤ料理は時間がかかるものが多く、普段はあまり作らないのですが、ユダヤ教のイベントでは一品か二品、必ず作るようにしています。ユダヤ教で忘れてはならないのが宗教上の食事制限です。レシピをご紹介する前に、ちょっとこのお話からしたいと思います。
ユダヤ教の食事制限
ユダヤ教では動物性のものに制限があり、食べても良い生き物は「コーシャー」、適切に処理された食事は「コーシャーミール」と呼ばれています。哺乳類では、コーシャーに属する動物は「ひづめが2つに割れていて反芻するもの」とされています。豚はこれに当てはまらないため、ユダヤ教徒は食べません。また「乳製品と牛肉が同時に胃の中にあってはいけない」という決まりもあります。これは「子やぎをその母の乳で煮てはならない」という文言からきた規定と考えられていて、牛肉のクリームシチューやチーズハンバーグなども食べられません。また、海の生き物では「ヒレと鱗があるもの」のみがコーシャーとして認められています。魚はいいですが、イカ、タコ、エビなどの甲殻類、貝類全般、牡蠣、鰻などは食べられません。
大まかにいうと以上のような制限がありますが、宗派によっては、使われる食器や調味料まで細かく決められています。意外と厳しいルールがあるユダヤ教ですが、世界のユダヤ人たちは、各地で工夫して料理を楽しんでいるようです。ここでは、アメリカで代表的なメニューを2つご紹介したいと思います。
ブリスケット(Brisket)
12月のアメリカはクリスマス一色ですが、ユダヤ人はクリスマスを祝いません。その代わり、ほぼ同じ時期に「ハヌカ」という祝日があり、家族そろって食事をしたり、プレゼント交換をしたりします。「ハヌカ」の由来は紀元前二世紀に遡ります。ギリシア人の支配下にあったイスラエルでは、エルサレム神殿が占領され、神殿の燭台(メノラー)を点す油壺が汚されるなどユダヤ教の掟が禁じられました。
その弾圧に対しユダヤ人が反乱を起こし、紀元前165年にようやくエルサレム神殿を奪回した時、汚されていない油壺が一つだけ見つかったということです。そして、一日足らず分の油しか残っていないのに点してみると八日間も燃え続けたという奇跡を記念して、「ハヌカ(光の祭り)」がお祝いされるようになりました。その「ハヌカ」でよく出されるのが、ブリスケットです。ブリスケットとは牛肉の部位の名前で、日本ではあまり馴染みがない名前ですが、時間をかけてゆっくり調理することで旨味が出てくる、スロークッキングでは代表的なかたまり肉です。
材料 (4人分)
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ブリスケットの塊 1.5キロ (脂身が気になる場合は取り除く)
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チリミックスパウダー 大さじ2
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塩 小さじ2
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ニンニクすりおろし 2かけ
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オニオンパウダー 大さじ1
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胡椒 大さじ1
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砂糖 大さじ1
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マスタード 小さじ1
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市販のバーベキューソース お好みで
作り方
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ブリスケットを常温に戻す。
-
オーブンを摂氏170度に予熱する。
-
バーベキューソース以外の材料を全て混ぜる。
-
混ぜたスパイスをブリスケットに手で塗りつける。
-
耐熱容器にプリスケットを入れ、170度で1時間焼く。
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一旦オーブンから取り出し、容器の中に1センチほど水を入れる(肉汁が多い場合は入れなくていい)。
-
容器にアルミホイルを被せ、オーブンの温度を150度に下げ、3時間蒸し焼きにする。
-
オーブンから取り出して、容器に入れたまま落ち着かせる(肉汁は捨てずに肉に吸わせる)。
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1センチほどにスライスし、皿に盛ってバーベキューソースをかけて食べる。
ラトケス (Latkes)
- ブリスケットの塊 1.5キロ (脂身が気になる場合は取り除く)
- チリミックスパウダー 大さじ2
- 塩 小さじ2
- ニンニクすりおろし 2かけ
- オニオンパウダー 大さじ1
- 胡椒 大さじ1
- 砂糖 大さじ1
- マスタード 小さじ1
- 市販のバーベキューソース お好みで
作り方
- ブリスケットを常温に戻す。
- オーブンを摂氏170度に予熱する。
- バーベキューソース以外の材料を全て混ぜる。
- 混ぜたスパイスをブリスケットに手で塗りつける。
- 耐熱容器にプリスケットを入れ、170度で1時間焼く。
- 一旦オーブンから取り出し、容器の中に1センチほど水を入れる(肉汁が多い場合は入れなくていい)。
- 容器にアルミホイルを被せ、オーブンの温度を150度に下げ、3時間蒸し焼きにする。
- オーブンから取り出して、容器に入れたまま落ち着かせる(肉汁は捨てずに肉に吸わせる)。
- 1センチほどにスライスし、皿に盛ってバーベキューソースをかけて食べる。
ラトケス (Latkes)
こちらはじゃがいもを使った料理です。ユダヤのイベントでよく作られます。パンケーキとハッシュブラウンの間のような一品で、ポテトパンケーキと呼ばれることもあります。外側はカリッと、中はもっちりして、病みつきになりそうな食感です。休日のブランチなどにもピッタリです。
材料 (20個分)
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じゃがいも 7〜8個
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片栗粉 1カップ
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塩 小さじ3
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卵 6個
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ベーキングパウダー 小さじ1
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揚げ油 適量
-
塩 (仕上げ用) 適量
-
市販のアップルソース (仕上げ用) 適量
作り方
- じゃがいもの皮をむいて、荒目ですりおろす。
-
すりおろした芋をガーゼで包み、完全に水気を切る(1時間)。
-
ボールに芋、片栗粉、塩、卵、ベーキングパウダーを入れて混ぜ合わせる。
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フライパンに油を厚めに引いて中火で熱し、スプーンで芋の塊を丸く落とし入れ、そのスプーンの底で潰して平たくする。
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両面がきつね色になるまで揚げる。
-
油を切って塩を振り、皿に盛ってアップルソースをつけて食べる。
- じゃがいも 7〜8個
- 片栗粉 1カップ
- 塩 小さじ3
- 卵 6個
- ベーキングパウダー 小さじ1
- 揚げ油 適量
- 塩 (仕上げ用) 適量
- 市販のアップルソース (仕上げ用) 適量
作り方
- じゃがいもの皮をむいて、荒目ですりおろす。
- すりおろした芋をガーゼで包み、完全に水気を切る(1時間)。
- ボールに芋、片栗粉、塩、卵、ベーキングパウダーを入れて混ぜ合わせる。
- フライパンに油を厚めに引いて中火で熱し、スプーンで芋の塊を丸く落とし入れ、そのスプーンの底で潰して平たくする。
- 両面がきつね色になるまで揚げる。
- 油を切って塩を振り、皿に盛ってアップルソースをつけて食べる。
ユダヤの料理は、とにかく時間がかかるものが多いので、作るときは時間を念入りに逆算します。ほぼ一日中キッチンにいる羽目になりますが、上手く作れた時は達成感が半端ないです。
日本語教師。夫の異動に伴い、アメリカ、韓国、ラオス、オーストラリアに滞在。2021年よりインドネシア在住。