日本の発酵文化を残すのは私たち!~次世代へ繋げていく~

「麹、大豆、塩」からつくる手作りの味噌

お味噌は買うものと思っていませんか?私もそのひとりでした。でも今では味噌を手作りしています。 仕込んでから3ヶ月〜半年くらい気長に待たないと、 お味噌は出来あがりませんが、いったん食べ始めると、おいしくてあっという間になくなってしまいます。手作り味噌作りは体力がいりますが、料理が苦手な私でも簡単に作れますのでご安心ください!

ワシントンDC近郊にある私の家には、たくさんのお味噌が並んでいます。自分で作ったお味噌って本当に美味しいのです。初めて自分で作った味噌を食べた時の衝撃は、今でも忘れられないくらい。 お味噌汁にして飲んだときの幸福感といったら、もう言葉では言い表せません。子供達からも美味しいと褒められました。

手作り味噌を保存するジャー

手作り味噌を保存するジャー


手作り味噌のパッケージ

手作り味噌のパッケージ

この経験をもとに、現在ワシントンDC郊外で「手作り味噌の会」など、手作りの会を主催しています。参加された方々からも、嬉しいメッセージをたくさん頂いています。

私は、味噌汁とおにぎりさえあれば生きていけます。手作り味噌は、ほっこりやさしい味で、体にじわっとしみこんでいく感じです。愛着の湧く自作のお味噌で作ったお味噌汁は絶品です。 味噌作りに使う材料も本当にシンプルで、手作りしてみて驚きました。「 麹・大豆・塩」――たったこの3つだけなのです。お味噌を発明した先人はすごいと思いました。

味噌の材料になる大豆

味噌の材料になる大豆

手作りの発酵食品との出会い

きっかけは、発酵食についてのある方のSNSでした。それまでは「麹」「発酵食品」というものについてもよく知りませんでしたが、ちょうど日本へ一時帰国するタイミングだったため、インターネットで検索をかけ調べまくり、滞日中にある教室の3日間コースへ参加することができました。「味噌作り」、「発酵調味料作り」――すべてのことが初めての経験でしたが、日本滞在中に学んだものをアメリカに戻って家族のために手作りできることが嬉しく、この出逢いにとても感謝しました。

そもそも「麹」や「発酵食」の知識がなかったので、アメリカへ戻ってからも、日本と同じように「生麹」が簡単に買えると思っていました。が、それは大きな間違いでした。インターネットで検索、検索..。車で行けるところへ行っては探しまわる日々が続きました。国境を越えてカナダ人にまで問い合わせの連絡をしたくらいです。

そんなある日、自宅で手づくりできる「基本の麹作り」のオンライン講座を見つけました。講師の方は、日本酒の造り酒屋でお酒をつくっていた「蔵人」(くらびと)さん。(蔵人とは日本酒をつくる技術者のことです。)今は独立して、7年〜8年ほど前からそれまで特殊な専門家の技術や知識であった「麹作り」について、一般の人でも台所で育てられる麹作り、つまり、暮らしの中で安全に確実に世界中どこでも手に入る道具で、麹を育てる方法を伝えておられます。麹は環境を用意すれば世界中どこでも作ることができることなど、講座内容を読み、即申し込みをしました。

初心者の私に本当に作れるのか…..?不安でしたが失敗を恐れていては何もできないし、前に進まない。その方は、日本から毎回オンラインで発信。実際に米を浸漬、蒸すところから始まり、米麹の作り方はもちろん、麹の文化や歴史から、酒作りや腸のはなしなどたくさんの学びがあり、日本の先人から代々受け継がれる発酵の技術、日本の知恵を知ることができました。

先生の話の中に出てきた「麹つくりは、酵素づくり」という言葉は、とても印象に残っています。生まれて初めて、出来上がりの”手づくり麹”を目にした時、本当に感動しました。表面が菌糸でモフモフになり、さわるとふわっと盛り上がっていて弾力のある状態。香りと味は栗のような「栗香」で、そのできあがりの麹は、とても可愛い我が子のようです。しかし、「麹の菌糸がモフモフしているといっても、酵素が多く生産できているとは限らない」と聞いたときは、衝撃的で麹つくりの奥の深さを実感しました。この、「麹つくりは、酵素づくり」という言葉をいつも心にとめています。

出来上がったモフモフの麹

出来上がったモフモフの麹


米麹。出来上がったら「枯らし」という乾燥の工程に入る。バラバラにして花道をつけることで、空気に触れる表面積を増やし、より乾燥しやすくする

米麹。出来上がったら「枯らし」という乾燥の工程に入る。バラバラにして花道をつけることで、空気に触れる表面積を増やし、より乾燥しやすくする

そして、麹作りの中で米麹作りが基本で、一番難しいところだということもわかりました。また、麹作りに必要な「種麹」(もやし)ですが、日本では、この種麹を売る専門の業者は7社ほどだそうです。その「もやし屋」(種麹屋)さんのおかげで、質の高い純粋な種麹を安定して手に入れることができます。それがなければ、私たち日本人がこよなく愛する和食、そして和食を支える、味噌、醤油、みりん、酢、酒といった、多くの発酵食品などが作れないのです。

正直なところ、お味噌はスーパーで簡単にいつでも買えてしまうし、ここ海外でも手軽に味噌が買えるようになったことはありがたいことです。でも私が日本を離れてアメリカにきた頃、日本では毎日のように、食卓に出ていた味噌汁、その味噌がなかなか手に入りませんでした。海外で生活すると、日本を離れているからこそ日本の良さを再認識し、大切さを感じます。きっと日本で生活していたら麹作りや、味噌作りをするなんて思わなかったでしょう。先人の知恵、大切な味、日本人がこよなく愛する味噌を、自分の家族のために手づくりするだけではなく、次世代に繋げていきたいと考えるようになりました。

「味噌は医者いらず」

何人かの方から味噌の作り方を教わったなかで、印象に残っている言葉があります。
   「味噌は医者いらず」
   「医者に金を払うよりも味噌屋に払え」
とても面白いことわざだと思いました。そのほかにも、昔の人が「大豆は畑の肉」といったように、味噌に含まれるタンパク質は、肉に比べても引けをとりません。しかも、生命を維持するために不可欠な必須アミノ酸8種がすべて含まれていると言うのだから、驚きです。味噌汁はまさに「肉汁」なのです。また、長崎で被曝した秋月医師を救った味噌汁の話など、興味深い話も聞けて、味噌の力は素晴らしいと実感しています。味噌は、日本を代表する「生きた日本のスーパーフード」なのです。

お味噌はまさに「生き物」です。同じように、同じ材料で作っても、作る人、醸す場所が違えば、同じ味には仕上がらりません。自分の手で、自分の暮らす環境で、じっくり育てていく楽しさ、そこが、手作りならではの楽しさなのだと思います。

味噌づくりはカビが一番の敵なので、味噌玉を手でギュッと丸めながら、空気を抜き、カビが繁殖しないようにする

味噌づくりはカビが一番の敵なので、味噌玉を手でギュッと丸めながら、空気を抜き、カビが繁殖しないようにする

皆さんのおうちごはんのお味噌が、手づくり味噌になることを「目標」に、ご家庭で少しでも、楽しく手作りできるお手伝いができれば、嬉しく思っています。

最後に、私は料理の先生でも、料理を教えているわけではありません、普通の主婦で2人の女子ママです。子育てしながら、昔ながらの発酵食品や発酵調味料作りを、次世代へ繋げていきたいという想いから、手作り味噌の会を定期的に開催しています。

手作り味噌作りを、次世代に繋げていけますように!
美味しくな〜れ♡

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