伝統的な東欧の家庭料理:ガルブツィ(голубцы)
ロシアは勿論、東欧の国々には決まってある家庭料理、ガルブツィをご紹介します。新鮮な野菜が手に入りにくい長い冬に欠かせないキャベツ料理です。要は、ロールキャベツなのですが、ウクライナでは同じスペルでも「ホルプツィ」、ルーマニアでは「サルマーレ」、セルビアでは「サルマ」と呼ばれ、それぞれ味が違います。東方正教会である私たちの教会で一年に一度開くバザーの名物になっています。
ロールキャベツの起源は大変古く、ブドウの葉で肉やコメなどを包んで煮込んだ「ドルマ」という料理が、1世紀頃からトルコのアナトリア半島で食べられていたようです。東ヨーロッパでは、ロールキャベツは基本的にトマトベースのソースですが、国や民族によって少しずつバリエーションがあります。たとえば、ルーマニアとセルビアでは、キャベツの葉を塩漬けして発酵させたものを使い、ルーマニアのサルマーレは酢漬けのキャベツ(サワークラウト)と一緒に煮込みます。セルビアのサルマは燻製のハムやベーコンを一緒に煮込みます。大きさも、手の甲くらいある大きなブルガリアのロールキャベツから、二本指くらいの小さなルーマニアのサルマーレまで。詰め物は、多くの場合、豚、牛、羊のひき肉と米に、玉ねぎ、にんにく、スパイスを入れたものを捏ねたミートボール状のものです。クリスマスや大晦日などのお祝い事にも供されることが多いですが、一般的にはいつでも食べられる家庭料理です。
メリーランド州のコロンビアにある私たちの教会では、毎年10月第一週の週末にフェスティバルを主催します。ハワード郡随一の国際色豊かなフェスティバルということで、4千人以上の人々が集まり、ステージでは、色々な国の衣裳の人たちの踊りや演奏を披露し、多くの人がギリシャ、ロシア、ルーマニア、エチオピアの料理、手作りのクッキーやケーキを楽しみます。
毎年、この準備のため、私たちは夏の間にこのガルブツィを約1,000個作ります。オーブンで焼いてから冷凍し、フェスティバルの際に再度オーブンで焼くという手順です。それまでには、キャベツにトマト味が染みて、美味しいロールキャベツになっています。
今回はロシア系のレシピをご紹介します。
材料
- キャベツ 1-2個(中)
【詰め物】
- 牛ひき肉 1ポンド(約450グラム)
- 豚ひき肉 1ポンド(約450グラム)
- 塩 1 tsp
- 胡椒 1/2 tsp
- ガーリックパウダー 1 tsp
- 長粒米(調理済) 1 1/2 カップ
- 玉ねぎのみじん切り 1/2 カップ
- パプリカ 1 tsp
【ソース】
- ニンニク 2片
- 玉ねぎ (中) 1個
- にんにく 2粒
- トマト(Diced)水煮 1缶(Large)
- トマト(Crushed)あるいはトマトソース水煮1缶(Large)
- 塩、胡椒、砂糖 少々
作り方
- 肉、ごはん、玉ねぎ、スパイスをよく混ぜて、ゴルフボールの大きさの肉団子を作っておく。
- キャベツの準備:中くらいのキャベツの芯をくり抜いて、外の固い葉も含めて、熱湯で茹でる。この際、キャベツの頭を下にする。外の葉が透明になり始めたら、外から一枚ずつ剥がして茹でる。外側の固い葉も葉ロールキャベツ下に敷き詰めて焼くために取っておく。全体を茹ですぎない様にするのがコツ。キャベツが少し冷めたら、一枚ずつ剥がしておく。小さい葉は細かく切って詰め物にしても、焼く際に上に散らしても良い。(全く無駄がないのが特徴。)
- ソースの準備:みじん切りにした玉ねぎとニンニクを良く炒める。塩、胡椒、砂糖を好みの味になる程度に加える。あまり入れ過ぎないようにするのがコツ。予め用意してあるトマトソース(Diced Tomato、Crushed Tomatoなど)に炒めた玉ねぎを入れて煮込む。
- ロースト用の深めの焼き皿に、キャベツの外側の葉や小さい葉を敷き詰めておく。その上に、肉団子のようにまとめた詰め物をキャベツの葉に包み、最後の茎の方が下になるようして並べる。きっちり詰め込まないで、ソースが間に染みるように並べる。その上にまんべんなくトマトソースをかけ、パーチメント・ペーパーをかぶせ、アルミフォイルできっちり蓋をしておく。
- 華氏375度(摂氏190度)のオーブンで1時間半焼く。(1時間ほどで詰め物の温度をチェックする。中身が155-160度(摂氏68-70度)になっていれば出来上がり。残り物を温めていくほどキャベツとトマトソースの味が馴染んでおいしくなる。
- オーブンを使わず、ル・クルーゼのようなダッチオーブンや、低温で食材を煮込むスロークッカーなどを使っても良い。キャベツにトマトソースの味が染みて、柔らかくなるまで煮込むのがコツ。
愛知県出身。在米40年。コロナ禍の2020年3月に日系企業を退職し、現在コンサルタント業・ボランティアに従事。現在、日本やヨーロッパの歴史を訪ねる旅が趣味。