ベトナムの高校生として、アメリカの大学入学審査について思うこと 人種の多様性 vs 公平性

アメリカの大学入学審査のアファーマティブ・アクション

1960年代以来、アメリカの大学の入学選考は、一般的に黒人やヒスパニック系などの少数人種を配慮する『アファーマティブ・アクション』と呼ばれる措置を、採用してきました。このアファーマティブ・アクションにより、白人やアジア系の志願者の入学機会が不当に減らされているという訴えに対し、今年の6月29日、最高裁判所は、大学の入学選考の審査に人種を考慮して合否を決めることは、法に反すると判断しました。

人々は、今後大学の学生構成の多様性が損なわれるのではと懸念しています。私は、この決定により、入学選考が人種的配慮を減らし、学力の優秀さ、およびその他の才能、芸術、語学、社会奉仕活動、経済的背景などに十分注目するのであれば、それが真の公平性に近づく大学審査になると考えています。

私のバックグラウンド

2021年に京都大学を訪問したわたし

2021年に京都大学を訪問したわたし

私はベトナム人で、小学5年生の時に、父が日本で働きだしたのがきっかけで、日本で4年間勉強する機会がありました。その後、母がアメリカの大学の修士課程に入学したため、私は、去年の2月より、ワシントンDCで母と弟と暮らしています。いまはDCの公立高校の2年生で、高校卒業後は、アメリカの大学で生物学を専攻するのを目指しています。

アメリカに来た当初は、教育や文化の違いにも戸惑って、困っていました。アメリカの学校では、生徒一人ひとりの個性を重視し、それが教育に限らず社会文化の多様性を築くもとになると考えているのです。なので、大学入学審査でも、申請者によるエッセイや課外活動は、生徒の個性について知ることができるため、大学の選考審査員はこの点を特に注目しています。このエッセイでは、アメリカの大学を目指しているアジア系の高校生の視線から、アメリカの大学入学審査のシステムとアファーマティブ・アクションについて話していきたいと思います。

日本とアメリカの大学入学審査の違い

日本のような入学試験が中心の入学選考と異なり、アメリカでは、一般的に高校の成績評価値であるGPA(Grade Point Average)と学力を図るための共通試験SAT(Scholastic Assessment Test)やACT (American College Testing)のスコア提出が必要とされています。そして、生徒の性格を知るために、エッセイや先生方からの推薦状も重視なポイントとして評価されています。また、学業だけでなく、課外活動(部活動、スポーツ、社会プロジェクト、ほかの才能など)も審査に含まれます。

私が見る大学の入学選考

私にとって、アメリカの学校の雰囲気はとても特別で、アジアでの規律が整った環境と違い、個性や多様性が溢れる空間がとても魅力的だと思いました。いろいろな人種の人や世界の様々な国の文化や特徴が交わった、それがアメリカ合衆国なのです。しかし、 誰もが同じバックグラウンドを持ち、同じ困難を経験しているわけではないです。アメリカ国勢調査局によると、黒人やヒスパニック系は、アジア系や非ヒスパニック系の白人に比べて貧困率が高いと示しております。具体的には、黒人とヒスパニックの約20%が貧困層に対し、アジア人と白人では約7%のみだと表されています。それに基づいて、アファーマティブ・アクションが生まれたのでしょう。

アファーマティブ・アクションが、少数人種の人々には嬉しいニュースでありますが、私たち、アジア出身の学生そして、インターナショナル学生にとっては不利だという意見も数々ありました。私は、アメリカの大学入学審査に関しては、人種配慮に基づき人種の多様性を図るのでなく、生徒一人ひとりの個性をもとに審査するべきだと思います。家庭の経済的余裕や、勉強の環境など審査のなかに考慮することも大切だと思います。
例えば、同じ高校生で、Aさんはアジア人、母子家庭に育ち、兄弟の世話もしながら、家を支えるためのバイトもし、勉強もしています。一方、Bさんは黒人、裕福な家で暮らしながら、私立の学校に通い、勉強のために全集中ができる環境にいます。この二人が同じ成績を収められたとしても、努力や根気はそれぞれ違うと思います。

なので、人種配慮によりアファーマティブ・アクションの対象となっている人種の学生だけ機会を増やす、それこそが不公平だと思います。生徒がその環境でどう努力したかその過程を評価するべきです。

どうやって私の個性やアイデンティティを入学選考のために活用できるか

今年の桜まつりにこどもコーナーで習字の担当としてボランティアしたわたし

今年の桜まつりにこどもコーナーで習字の担当としてボランティアしたわたし

この7カ月間アメリカで過ごし、困ったときや諦めそうになるときは数えらないぐらいありました。それでも、自分の成長を見れることが一番の達成感でした。私が通う学校では、75時間の社会奉仕活動が卒業するために必要とされ、初めは時間を得るため、いろいろなボランティア活動に参加しました。これらの経験を通し、桜まつりでは新しい友達を作れたこと、そして、ベトナムの教会や近所の小学校でお手伝いをしたこと、夏のプログラム『Japan in DC 』で日本大使館を訪問したことや、沖縄県ワシントン事務所所長にお会いできたことなど、本当に数えられないくらいの貴重な体験をしました。そして、合計のボランティア時間は、学校で要求されている75時間の倍の150時間になりました。

アメリカの学校では生徒の自主性を重視しているため、課題がなく、ただ先生によるスタディーガイドのもとで、自習するクラスもあります。テストの場合、プレゼンテーションやオープンテスト(ノートを開いても良いテスト)などいろいろな形で行われます。このように様々な学習方法が揃っている教育では、生徒一人ひとりが自身の長所を表せる機会を与えられていると思います。

この素敵な環境で勉強をできて、私は両親に心から感謝しています。この機会を利用し、そして自分の3ヶ国語の語学能力を活用し、私はアメリカの大学に入ることを目指しています。アメリカで育ったわけでなく、言葉や情報・ネットーワークなどの面で、多少不利はあるかもしれませんが、私は、自分にしかないアイデンティティーに誇りを持っています。

17歳女子高校生。大学合格に向かってファイト!


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