アメリカ大学進学体験談

我が家は2年前に息子がカリフォルニア大学に、今年は娘がワシントン大学に進学しました。超一流の大学に入ったわけではありませんが、我が家のような普通の家庭の子供たちの経験が皆さんのお役に立てばと思い、私の感想なども含め書かせて頂きました。

まるで日本の就活? 日米大学入試の違い

日本で「大学受験」と言えば「テストの一発勝負」というイメージがあります。最近は、学力に頼らず、本人の意欲や大学との適合性などを重視する「AO (Admission Office) 入試(総合型選抜)」を採用する大学も増えてきたようですが、まだ試験日のテストの結果が合否を決める大きな流れに変わりはありません。

一方、アメリカは、高校の成績は勿論のこと、その他のスポーツやボランティア活動、小論文(エッセイ)、推薦状なども審査の対象となり、総合的に判断されます。特に大学側が欲しい人材は、リーダーシップがある学生、困難に立ち向かう学生、何かに特に秀でた学生などです。すべてオンラインで書類を提出するので、その中で自分をいわば「売り込む」必要があります。

驚いたのは高校から書くように求められた「ブラッグ・シート(Brag sheet)」でした。Bragつまり、自慢できることをなるべくたくさん書いて、高校のカウンセラー(進学相談の担当者)に出し、推薦状を書いてくれる先生方の参考にしてもらうというものです。生徒本人は勿論のこと、親も別のシートに書き込み、活動内容、様々な受賞歴の他、「性格を3つの形容詞で表すとしたら」、「どんな困難をどう乗り越えたか」などのエピソードを加えて書き出す必要がありました。よかったのは、こうしたプロセスで本人も自分の強みを見つけ、自分が他の人とどう違うか、どういう点で大学に自分をPRできるか確認できた事です。

日本では就職活動の際「大学時代に何をしたか、今どんなことが得意か、そして入社したら何をして将来どう貢献できるか」を面接などでアピールする必要がありますが、アメリカの大学進学では「高校時代に何をしたか、大学でどう貢献できるか」など、まさに似たような売り込みが必要なんだと思いました。

子供や親が書き込むBrag Sheet(ブラッグ・シート)。空欄だけでも子供のは4枚もある。「できるだけたくさん書き出して下さい。でもできれば5-6枚で納めて下さい」との注意書き

子供や親が書き込むBrag Sheet(ブラッグ・シート)。空欄だけでも子供のは4枚もある。「できるだけたくさん書き出して下さい。でもできれば5-6枚で納めて下さい」との注意書き

どうやって志望校を決めるか 

数多い大学のうち、どこに願書を出すか、高校生にとっても親にとっても悩みどころです。学校から言われたのは、理想の大学、自分のレベルの大学、滑り止めの大学、それぞれ3つずつに出すということでした。

とはいっても、どこの大学なら入rれる可能性があるのか、最初はわかりません。それを知るのに便利だったのは、Naviance(ナビアンス)というオンラインのツールでした。多くの高校で使われていて、生徒は自分のアカウントがあり、学校の成績やSAT (Scholastic Assessment Test)、ACT (American College Test)などの共通テストのスコアをもとに、自分に適したレベルの大学を調べることができます。過去に同じ高校からどのぐらいの成績の生徒がどこの大学に入ったかなど細かいデータがわかります。

多くの生徒は、自分が住んでいる州内の大学に進学します。実家から近いことや学費が州外より安いことが理由です。でも我が家は二人とも今までと違った環境に行きたいということで、他州を選びました。志望校を決めるときに大きな基準となるのは、場所(州内/州外、都会/地方)、規模(学生の数が多い/ 少ない)、気候(寒い/ 暑い)、そして本人が勉強したい内容についてどれくらい充実したプログラムがあるかなどです。息子の時はコロナ禍だったので、大学のキャンパスツアーもオンラインのみという所が多かったのですが、娘の時は実際に大学を訪問して学生のイメージやその地域の雰囲気も理解することができました。ツアーは、願書を出す前に行った大学もありますが、合格通知をもらった中で絞り込むために参加した大学もあります。それでも多くの大学に行くのは難しいので、ツアーがなくても家族旅行に行った際、近くの大学に立ち寄ってみるという形で様々な大学の比較ができたのもよかったと思います。実際、息子の場合、高3の冬休みにロサンゼルスに行ったとき、カリフォルニアの気候と自由な雰囲気が気に入り、希望校を決める大きなきっかけになりました。

大学のキャンパスツアーは、学生が主導。後ろ向きに歩きながら、教室や寮を案内してくれる。人気の大学は早くから予約がいっぱいに

大学のキャンパスツアーは、学生が主導。後ろ向きに歩きながら、教室や寮を案内してくれる。人気の大学は早くから予約がいっぱいに

合格できた学生だけを集めて開かれる春の大学のオープンハウス。「是非わが校へ来てください」というPRで、まるでコンサート会場のような盛り上がり

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日本語教育はどこまですべきか?大学進学に有利か?

アメリカで日本人が子育てするときの大きな問題は日本語教育です。我が家も日本人の私とアメリカ人の夫で子供たちをバイリンガルに育てたいと思い、補習校に中学の途中まで通わせました。では、振り返ってみて、それが大学進学にどれだけ影響したかというと、よくわかりません。エッセイでは、いかに読み手の心に残る内容を書くかが大事だと言われますので、その意味では、二人とも日本での体験を書いたことは他の生徒より目立つ理由になったかもしれません。でも、エッセイは「何をしたか」というより「困難を克服する中で、どう考え、何を学んだか」が大事だと言われますので、必ずしも日本語学習の継続が大事だとは限らないと思います。むしろ、日本人の親なら子供は日本語を勉強するのは当たり前で、全く違うロシア語やアラビア語を学んでいた方がチャレンジしていると見られたかもしれません。

勿論、補習校を高校まで進んで超一流の大学に入られた方々もいらっしゃいますが、小学校の途中で辞めてもいくつもの有名なところに全額奨学金で合格したお子さんのケースもあり、日本語教育と大学入試の関係を一言で語るのは難しいと思います。

ただ、大学に入ったあと、心理学を専攻とした息子は、外国語のクラスを取らずに日本語を副専攻(マイナー)できていますし、娘は日本人のクラブに入って同じような二重国籍の学生との出会いを楽しんでいるので、日本との繋がりを深める基礎にはなったのかもしれません。

日本語教育は、国際結婚組の場合、最後のバイリンガル、大学へのメリットだけを念頭に置くのではなく、日本の家族との交流を楽しんだり、文化の違いを経験したり、その途中でどれくらい子供が楽しめるかを考えて、いつまで続けるかを決めたほうがいいのではないかと思います。

日本語補習校の中学は嫌々通っていた娘だが、アメリカの大学に入ると自ら日本人グループに参加。同じような境遇の友達を見つけるのも楽しいようだ

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これから大学進学を目指すご家庭へのアドバイス

二人の子供を大学に送り込んで、やっとアメリカの進学プロセス、そして大学が求める学生像を理解することができた気がします。それを考えた上で、これからのご家庭にアドバイスがあるとしたら、「何がしたいか」について子供の声をよく聞いて、「どういう事が得意か」を見極めるため子供をよく観察することが大事だと思います。大学は、平均的に何でもできる学生というより、それぞれの学生の強みを知りたいからです。

また何歳であっても、その子のレベルに応じたチャレンジをさせたり、できたことは、しっかり褒めて自尊心を高めることの大切さも知りました。そうした経験を積み重ねることで、大学や社会で求められるリーダーシップが培われるのだろうと思います。
大学進学は情報が多すぎて、親子ともどもストレスが溜まりやすいですが、最後にお勧めのリンクをご紹介させて頂きます。

  • エッセイの書き方指導(Inessence Education) カリフォルニアの大学のアドミッションで勤務経験がある立川愛弓さんは、オンラインでエッセイの書き方を指導して下さいます。娘はたくさんある情報をどうまとめるか悩みましたが、お陰様で本人の納得できるエッセイを書くことができました。
  • 大学進学ガイダンス (ライトハウス)カリフォルニアの日系情報誌には、様々な情報が掲載されていますが、教育に関しては原田先生がたくさん記事を書いていらっしゃいます。こちらから、さらに詳しい内容を読むことができます。

子供が小さいうちは、子育てが永遠に続くような気がして大変な時期もありますが、アメリカは高校卒業が子育ての卒業でもあります。あっという間に過ぎていきますので、その日その日を大事に、そして親子で過ごせる家族時間を楽しんでください。


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