二重国籍問題の背景

グローバル時代のジレンマ

グローバル時代に生きる皆様は遠く離れた海外の親類、友人や同僚との繋がりをとても大切にされているのではないでしょうか。必要に応じてすぐ海外に出発でき、滞在期間に制限されない自由なライフスタイルが理想です。その為に出入国に便利な二重国籍のダブルパスポートが必要だと思う方が多いと聞きます。

アメリカに住むにはアメリカ市民権があれば便利ですが、家族がまだ日本にいる、老後の生活は日本が安心、そして遺産相続に影響するかもしれないなどの理由で日本のパスポートを放棄したくない方が沢山います。二重国籍をすでに持っている方でも、日本が二重国籍を認めていないのでこの問題に対する気持ちは複雑ではないかと察します。

アメリカンForever

アメリカは移民の国なので建国以来ずっと二重国籍を認めていると思いがちですが、実はそうではなく、第二次世界大戦後徐々に多国籍を認める方向に歩み始め、1967年の最高裁判所の判決以降、二重国籍が認められるようになったのです。

日本と違い、アメリカは国民が他国籍を同時に持つことを認めています。そして二重国籍を持つ子供が成人した際、どちらかの国籍を選択しなければならない義務もありません。また、アメリカ国籍をいったん取得すると簡単に放棄できません。移民局か米国領事館で国籍離脱/喪失の申請手続きをしなければならず、許可を得る前に本人の意志を確認するためのインタビューまで必要です。つまり、たとえ日本国籍を選択しても、アメリカ国籍が自動的にキャンセルされるのではありません。

アメリカの国籍法には二重国籍に関する条項はほとんどなく、唯一あるのは、国民は出入国時に必ずアメリカのパスポートを使うこと、という規定です。二重国籍は認めていますが、公式に支持する文言は見つかりません。実際アメリカで市民権申請者には必ず「国民としてアメリカに忠誠を誓うこと」が要求されます。つまり、政府の立場は「二重国籍を認めるが、個人や国同士の利害対立が生じるのを避けるため、積極的に支持はせず」と解釈していいと思います。

国籍選択に悩む日本人

日本国籍法の規定では、日本国民が外国の国籍を自ら取得すると日本国籍を失います。アメリカと同じように、二重国籍を持つ事によって個人と両国の間の権利と義務が対立する可能性があるので、そのようなポリシーを保ち続けているのでしょう。日米国籍法の血統主義と出生地主義の違いを指摘する学者もいます。日本の国籍法は血統主義で、基本的には日本人から生まれた人だけを日本人とみなす。これに対して米国は出生地主義で、米国で出生した人は誰でも米国人とみなす。他国籍を選択した後の日本籍離脱/喪失届の流れは法務省や日本領事館のウェブサイトに載っていますが、実際に二重国籍を持ち、両国の間を行き来している人も多くいます。歳老いた両親の看病をしなければならないので、どちらの国籍も捨てがたい; 将来どこで老後生活を送るのかまだ決められない; そして、遺産相続や国民健康保険の問題も考慮したい、などの理由が頻繁にあげられます。

世界的トレンド

World Population Review組織の最新データによると、世界195国のうち、現在二重国籍を認めているのは61ヵ国です。これは思ったよりも少ない数ですが、このようなデータはあくまでも参考までにしかできません。なぜなら、実際、アメリカのように「認める国」と日本のように法律上「認めない国」の他にもう一種類、「特殊な条件を満たす場合だけ、二重国籍を認める国」が多くあります。このような国をどちらのカテゴリーに入れるかによって、二重国籍を認める国の合計数がだいぶ違ってきます。

二重国籍が世界的に認められるようになったのは20世紀に入ってからです。イギリスは1948年、カナダは1976年、そしてEUの先進国も1990年以降、徐々に二重国籍を認めるようになりました。スウェーデンは2001年、、そしてデンマークは2015年に二重国籍を認めるようになりました。先進国は殆ど認めていますが、特殊条件付きの国も少なくありません。二重国籍を認めない主な国は中国、インド、マレーシア、シンガポールなどですが、大切なのは、国籍法はその国の社会・政治情勢によって変わる可能性があるという点です。

二重国籍と移民政策

本稿を執筆するにあたりリサーチをしていて気づいたことがあります。国が二重国籍を許可することとその国の移民政策は密接に関連しているということです。国内に外国籍居住者が多い国ほど、二重国籍承認を迫られる傾向があるのではないでしょうか。ドイツの場合、2014年に国籍法を変えた最大の理由に、国内に長年住むトルコ人移民とその2世3世の国籍問題が挙げられます。その結果、国内でドイツ籍を取りたいトルコ人を含む外国人と国外に住むドイツ人が外国籍を取る条件が異なります。後者のドイツ人は外国籍を取る前にドイツ籍保持許可書を申請しなければなりません。

日本ですが、アメリカに居住している日本人の場合、「二重国籍」とは、出生国籍および移民国籍(アメリカ国籍))の両方を同時に所有することです。その反面、日本国内の外国籍居住者にとっての二重国籍は、日本国籍を取得した後でも出生国籍(例えばベトナム国籍)を保持することを認められることになるわけです。これに関しては日本国内でコンセンサスが取れているのでしょうか。

もちろん移民政策以外の国内問題を解決するために二重国籍を認めるケースもあります。2020年に二重国籍を承認したロシアの場合ですが、人口減少対策として法律を変えたと報道されています。

以上、簡単に二重国籍問題についての背景を私なりにまとめてみました。他の問題でもそうですが、一見シンプルな解決策がありそうで、実は色々なファクターが絡み合い複雑なことが見えてきました。ドイツは移民対策、ロシアは人口減少対策で政策を変えてきたのです。日本も将来国内事情で二重国籍が認められるようになる日が来るのかもしれません。


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