東京2020オリンピックボランティア

難関突破するも開催が1年延期へ

オリンピックが東京で開催されることが決まった時から、ボランティアをしたいと思い、2018年末に応募した。8万人の枠に3倍もの応募があったが、翌年4月にテレビ電話での面接があり、9月に研修受講の連絡が来て無事採用された。年末に日本へ一時帰国した時にオリンピック記念青少年総合センターで全国のボランティアと一緒に研修し、同時期に女子バスケットボール予選、女子ハンドボール準決勝、女子水球準決勝、男子水泳3位決定戦など、興味のある競技チケットを購入した。

2020年3月にセーリング村でのアテンド業務(選手が快適な競技生活を送ることができるよう、外国語でのコミュニケーションサポートなどを行う)というオファーが来た。セーリング村は会場の江の島ヨットハーバーに近い大磯プリンスホテルだ。東京での居住地から片道2時間以上かかる。場所の変更は不可なので自費でホテルに泊まることを決めた(ボランティアには毎日1000円の交通費と1回の食事が支給されるだけ)。そのころ日本ではクルーズ船でコロナ感染が発生、3月30日にオリンピックの1年延期が決定した。

コロナ感染が広まり、オリンピックの歴史などを学ぶ研修も全てオンラインになった。マスクの正しいつけ方、サニタイザーの使用、ソーシャルディタンスをとった観客誘導の仕方なども学んだ。「多様性と調和」を尊重という東京2020の目標もあり、LGBTQに関する研修、討論会、手話講習などもあった。

コロナ禍で不完全燃焼なボランティア・プラン

オリンピックは7月23日開幕だが、選手や関係者はそれ以前に来日するので、ボランティア担当期間は7月10日から8月6日。私はチケットを購入した競技の日以外で、東京到着後14泊の隔離が終わる7月13日から合計16日間を希望した。活動予定は毎日午前9時から午後6時まで。セーリング村の担当者から、私はカナダの選手団の担当との連絡がきた。コロナ感染が収束せず、7月7日に東京都に緊急事態宣言が出たことをうけ、開催地である1都3県では無観客が決定。セーリングも、私がチケット購入していた競技も無観客になってしまった。

7月13日がボランティア初日。ユニフォームを着て会場との往復をするようにとの指示だった。大磯駅からプリンスホテル行きバスに乗ると、ボランティア仲間がいた。その人はボランティア2日目で、彼のおかげで警備が非常に厳しいプリンスホテルへのアクセス方法もわかった。入口は1か所だけで、手の消毒後マスクを外して顔認証、空港のような荷物チェック。水持参の場合はその場で飲んで毒入りでないことを証明しなければならない。

現場研修を受け、スタッフ、選手や関係者と連絡を取り合うための携帯電話が貸与された。私と一緒にカナダ担当をするのは大学4年生のT君。セーリング村は7月10日オープンからまだ3日目だったので、ボランティアスケジュールは未整備。選手団もあまり到着していなかったため手持ち無沙汰だった。カナダ選手団のキャプテンを見つけ自己紹介すると、彼と一緒にいたセキュリティ担当の方が、ホテルのセキュリティをチェックしたいと言う。ホテルの警備担当から、ホテルを囲む高い塀の40個のセキュリティカメラと、地面の排水溝やバスのトランクに貼ってあるブルーのテープはチェック済みの証拠であるという説明を受け、警備の厳しさを実感した。選手が毎日コロナ検査をするためのテストキットを各国チームに配布することも担当する。カナダセーリングチームの事務長のKatyは、その夜10時に選手団と一緒にチェックインするそうで、夜10時はボランティア時間外のため、その日の活動は終了。アメリカはボランティアは不要と言ったということを聞く。

翌14日はT君と一緒にカナダチームを見つけKatyに自己紹介をしたが、携帯番号の交換だけで終わった。セーリング村スタッフが詰めているチェックイン場所で、既に入村している国の関係者からの質問に答えたり、案内したりもした。その後、スタッフからカナダも選手に対するボランティアのサポートは不要と言ったと聞いた。選手は全員ワクチン接種しバブルに入って感染しないようにしているのに、ワクチン接種が行き渡っていない日本で公共交通機関を使って通ってくるボランティアと接触したいはずがない。

江の島ヨットハーバーでボランティア

結局、7月15日からセーリング村のボランティア全員が、江の島ヨットハーバーに行くことになった。活動内容は①アスリートラウンジの運営サポート、片付け(ランチルームでリサイクルの指示とごみの片付け)、②アクセスコントロールで選手、大会関係者のパスの確認(選手と大会関係者だけしか入れない場所があるので、チェックポイントでパスをチェック)で、両方とも早番と遅番があり、前日の夕方Eメールで翌日のスケジュールが送られてくる。

選手は大磯プリンスホテルに宿泊しているが、コーチ、ドクター、ヨット技術者などは付近のホテルに分散している。カナダ担当としての仕事はコーチとメンタルヘルスのドクターのタクシーを注文することだった。Katyから、「何日の何時、東横インから江の島ヨットハーバーまで、○○コーチのピックアップ」などの携帯メッセージが入り、組織委員会と契約しているタクシー会社に連絡をした。

筆者撮影:左はカナダチーム事務長Katy、中央筆者、右はメンタルヘルスドクターのKirsten

筆者撮影:左はカナダチーム事務長Katy、中央筆者、右はメンタルヘルスドクターのKirsten

パンデミックのせいで、オリンピック中止の署名運動も出る事態になり、日本の友人にはボランティアのことを言いにくい状況だったが、5年間も鍛錬した一流選手たちを目の当たりにして、中止されなくて本当に良かったと思う。

観客席でボランティア仲間と、東京2020を盛り上げる気持ちでいっぱい

観客席でボランティア仲間と、東京2020を盛り上げる気持ちでいっぱい

無観客のおかげで、ボランティアも休憩時間に観戦することができ、海にでていくヨットを見るのはとても気持ちが良かった。NTTが長さ50メートルの巨大なスクリーンを設置し、遠い沖でのレースを臨場感いっぱいで映すのを見るのは感激だった。アスリートラウンジの隣に表彰台が設置され、表彰式を至近距離で見ることもできた。天候に恵まれ、オリンピックボランティアができたのはかけがえのない思い出になった。

筆者撮影:NTTの巨大スクリーン、レースの詳細が手にとるように見える

筆者撮影:NTTの巨大スクリーン、レースの詳細が手にとるように見える

筆者撮影:セーリング花形競技男子470級の表彰式、予選断トツ1位で突破したオーストラリア組が金メダル!銀スウェーデン、銅スペイン

筆者撮影:セーリング花形競技男子470級の表彰式、予選断トツ1位で突破したオーストラリア組が金メダル!銀スウェーデン、銅スペイン

ボランティア仲間との交流も素晴らしい経験だった。私が初日に会ったYさんは高校の校長まで務めた柔道の有段者で南米に2年も柔道を教えに行った方、商社で30年以上もブラジル駐在だったTさん、フィリピン人で日本人と結婚し静岡在住のMさん、日本語堪能なロシア人女性で鎌倉在住のOさん、ブラジル人と結婚してブラジル在住のMさん、ロサンジェルスで育って大阪で小学校の英語教師をしているRくん、彼らの話を聞いているだけでも楽しかった。皆で、次回開催地の「パリへ行こう!」というLINEのグループを作り、今でも連絡しあっている。

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