自由キモノのススメ
日本の着物事情は高スピードで変わっています。ひとことで言うと、自由。洋服感覚でコーディネートした人たちが、楽しそうに着ています。女性だけでなく、男性の自由着物愛好家も増えており、ネットのビンテージ着物市場は、活況を呈しています。
現在、爆発的人気なのが着物研究家のシーラ・クリフ教授。洋服はほとんどお持ちでなく、毎日着物です。ぜひ、彼女の インスタグラム(Kimonosheila)をご覧ください!故樹木希林さんの着物姿も素敵です。検索すれば写真が出てきます。まず色や柄のセンスに感動しますが、寒い冬はタートルを下に着たり、ブーツを履いたり、イアリングや帽子をコーデしたり、自由に着てらっしゃる。サイズ違いもなんのその。確かに眉を潜める保守的な方はいます。(自由着物愛好家の間では、「着物警察」と呼んでいるようです。)けれども、大正時代のハイカラ女性は、思い切って袴にブーツを履いたではないですか。和装の幅が、時代に沿って広がり、生き続けるのは嬉しいこと。伝統の否定ではありません。
若い人も外国人も魅了する着物の良いところって何でしょう?
- 昔から決まっているパーツ(着物、帯、帯締め、帯揚げ)の組み合わせで、無限の変化が楽しめる
- 襟の空き具合、帯の位置、締め方で、可愛らしさ・色気・貫禄など色々な雰囲気が作れる
- サイズに融通が効くので、人から譲り受けたものでも着られる
- 流行があまり無いので、自分の個性が発揮できる
- 年齢を重ねても、若い子に真似できないカッコよさが表現できる
様々な着物の着付け学校ができ、隙なくピシっと着ることが求められるかのようになったのは、いつ頃でしょうか。私たちの祖母の時代は毎日着ていたし、古い婚礼写真をみても、着付けのラフさに驚きます。でも、自然。それでいい。樹木希林さんもシーラさんも、体の補正なんかしないで、昔の女性のように、自然に着ています。帯板なんか無し。結構シワシワな所がある。ビンテージの着物だから、丈が短い。それでも体に馴染んで「私は私。どうだ!」という姿勢が、かっこいい。「私は肩が張ってるから、着物は似合わないの」という友人がいます。いえいえいえ。なよっとした女風を目指さず、襟を立ててちょっと男っぽく、カッコよく着ればいい。縦縞の着物なんかどうですか?
着物歴40年の私。親戚中から集まった着物に飽き足らず、20年ほど前から、ヤフオクで着物や帯を物色してきました。「え?ネットで買うって、怖くない?」とよく聞かれます。いーえ。日本のマジメな業者さんたちは、評判が下がることを気にして、目を皿のようにして「難」を探してくれます。薄いシミでもズームアップして写真を掲載してくれる。許せる範囲のものを落札し、クリーニングに出してから着ることもあれば、直接肌に触れる下着じゃないし、とそのまま着ることもあります。エコ思想の浸透から、人々の中古に対する抵抗感が下がり、リサイクル業者が増え、タンスに眠っていた着物がどんどん市場に登場。最近は、アンティーク着物のファンが増えて、入札数が上がりましたが、1万円程度で、状態の良い素敵な着物・帯が買えます。
中にキャミソールを着て留袖をドレスとして着るのもありです(写真、Facebook着物グループ投稿より)。内側の襟を外に折り出して、長い着物をウエストまでたくし上げて縛り、太いベルトを締めているだけだそう。留袖は黒でかっこいいのですが、着物としては格式が高すぎるために求める人が少なく、アンティーク市場では上質のものが安く出ています海外では、ジャケットとして羽織を着ている姿を見かけるようになりました。羽織は、昭和の後期から流行らなくなったので、中古に出回っているのは昭和中期までのものですが、とても素敵な柄が多いです。浴衣も簡単です。気軽に和装デビューし、慣れたら正統派着物や帯にも挑戦してください!着物の醍醐味は、パーツの組み合わせです。今はYouTubeで着付けも解説されています。
季節感と場の雰囲気をコーディネーションに取り入れる
最初の一枚は、着る季節が限定されたものを選ぶのもテです。その季節が近づくと、着たくなるような一枚。桜の柄とか、涼しげな水紋とか、もみじ柄とかいかが?趣味を絵柄にしたものも素敵です。音楽が好きな方は、コンサートにぴったりな音符とか楽器の柄のものを選ぶ。猫ブームで、猫柄の帯はネットでも大人気です。
椿、桜、花火、トンボ、紅葉、雪。日本人は、古来、生活のあちこちに季節の移ろいを感じながら生きてきました。着物は、夏は周りの人が涼しさを感じるように、冬は暖かく感じるように、柄や配色を工夫する。おめでたい場は、ゴールドやシルバーの入ったもので、襟はきちんと。季節まで考えるコーディネーションって、やっぱり日本のキモノ、素敵だと思いませんか?
カリフォルニア大学言語学修士。日本語教師養成科講師。夫の転勤に伴い、北京、ジュネーブ、DC、テヘラン、LA、ジャカルタなどに居住。2023年1月よりローマ在住。
世界に日本文化が広がって欲しいとせつにいのってます
着物は大好きですが、日本の伝統、文化を大事にしたい気持と、西洋文化を取り入れながら日常生活を送っている私は、
着物の着付けや作法等の不便さ確執をどうにか合理的にならないかと悩む。まだ古い伝統とやらを壊しつつ、改善され快適な着物生活を実現したいと思い続けいます。