ワシントンD.C. 着物生活

初めまして。着付け師の Hideko Rebh Uchiyama と申します。現在は、ワシントンD.C.の日米協会で着物の教室を担当しています。今回は、一人でも多くの方に、「着物を着て出かけてみたい!」と感じていただきたいとの思いから、私の着物生活をご紹介します。

ワシントンD.C. でこそ着物を着るべし!

私は20代の頃、ハクビ着物学院に通い、着付け師のお免状をいただきました。小さい頃から母の着物姿に慣れ親しんでおり、友人の結婚式への出席用に自分の着物を手に入れたことをキッカケに、着付け師への道を歩み始めたのです。しかしながら、日本では、着付け師で生計を立てるのは難しく、メインの仕事はサラリーマンで、着物に関わる仕事は、お友達に教えたり、友人の美容院の繁忙期にお手伝いしたりぐらいでした。

しかし、7年前にアメリカに引っ越してきて、私の着物生活が激変しました。

皆様もご存知のように、アメリカでは日本とは比べ物にならないほどパーティがたくさんあります。私も最初は、「着物は汚れたら大変だから」と思い、ワンピースやスーツなどで出かけて行きました。不慣れなパーティや話題についていけず、誰も話しかけてくれない壁の花になって行く自分がそこにいました。「そうだ、汚れてもいいから着物着て行こう」――。 そして、その年のクリスマスパーティから、着物を着て出席してみました。すると、私の着物姿を見た方たちが話しかけてきてくれるのです。ワシントンD.C. と言う土地柄もあるのか、「日本の佐世保に3年住んでました」、「日本で食べたカレーは本当に美味しかった」、「日本のデパートって、美術館みたいで素敵ね」ーーなどなど、日本の話題で向こうから話しかけてくれるのです。

やはり日本の着物は、多くの方の目を惹きつけるのだと思います。ワシントンD.C.に来てもっともっと着物が好きになりました。

アメリカ高校生と着物

毎年春の桜祭りの時に、ジャパンボウルという高校生の日本語弁論大会が開かれます。全米の選手権を勝ち抜いた高校生がワシントンDCに集まるのです。その昼休みに、日本文化体験コーナーがあり、書道、空手、茶道などに混じって、着付けのコーナーもあります。そこで毎年、浴衣の着付けを担当させていただいています。

最初の年は、我々が着付けることにしたのですが、着付けコーナーに高校生が100名以上並び、結局最後のほうは、着物を着ていただけないという残念なことに。その翌年から30名限定ということで、高校生が自分で着る浴衣コーナーを設けました。我々日本人には思いもよらないような着物と帯コーディネートの高校生もいらっしゃいました。

高校生の日本語弁論大会で、思い思いの浴衣を来た参加者たち

高校生の日本語弁論大会で、思い思いの浴衣を来た参加者たち

素敵なレディーへのお着付け

春や新年会シーズン、そして結婚式向けなどに、着付けのご依頼をいただきます。着物は、「一髪、二化粧、三着付け」と言われるように、着物や着付けがバッチリでも、髪の毛がだらしなかったら折角の着物も台無しです。みなさまへの着付けは、ヘアセットと着付けとを組んで提供させていただいています。このお仕事は、本当に楽しいです。色々お喋りしながら着付けをさせていただき、最後に鏡をご覧になった時にお客様の笑顔が本当に美しく、「着付け師になってよかった」と心から思える瞬間です。そして、どのお客様も着物をお召しになると、10倍も20倍も美しくなられます。

素敵なレディーへのお着付け

素敵なレディーへのお着付け

着付けはヘアセットと組んで提供する

着付けはヘアセットと組んで提供する

日米協会のアニュアルディナー

日米協会は毎年秋に、ファンドレイジングのディナーを主催します。受付に立たれる方は、着物をお召しになられることになっており、その着付けとヘアを担当させていただきました。

ワシントンDC日米協会のイベントで記念撮影 同協会のFaceBookサイトより

ワシントンDC日米協会のイベントで記念撮影 同協会のFaceBookサイトより

お茶会

これも大切なご縁です。着付け教室を何回か担当させていただいたあとに、生徒さんから「お茶を習われてはいかがですか?」とお誘いを受けました。着物以外の日本文化とはほとんど縁がなかった私ですが、「着物を着る機会が増えるのであれば…」と思い、ワシントンD.C. 裏千家の門を叩きました。初釜などのお茶会はもちろんのこと、毎週のお稽古にも着物をきて出席させていただいています。

ワシントンD.C.裏千家 初釜での着物(筆者は左、2019年)

ワシントンD.C.裏千家 初釜での着物(筆者は左、2019年)

ハロウィンだって、クリスマスだって着物着ちゃいますよー

日本にいる時には、ほとんど手を通すことのなかった無地のオレンジのお着物。こちらでは、ハロウィンというかぼちゃのオレンジと魔女の黒がイメージカラーの素晴らしい行事のおかげで大活躍しております。毎年のクリスマスパーティーもお着物で参加しています。

オレンジと黒の組み合わせでハロウィーンの装い

オレンジと黒の組み合わせでハロウィーンの装い

クリスマスパーティーにはクリスマス柄の帯をしめて出席

クリスマスパーティーにはクリスマス柄の帯をしめて出席

Japan Night

アメリカに移住してから始めた日本文化のお稽古が4つあります。その一つが上述の茶道、二つ目は書道、三つ目は香道、四つ目は合気道(着物とは直接関係ありません)です。書道と香道は、日本文化の申し子と言われている西浦喜八郎先生から教えていただています。

我が家はペンタゴンの近くにあるせいか、同じコンドミニアムに多くの軍関係の方が住んでいらしゃいます。日本にいらしたご経験のある方も多く、皆さん日本の思い出やお土産を大切にされていらっしゃいます。それならと企画したのが私が住むコンドミニアムでの Japan Nightです。実は Japan Nightの企画には、もう一つの目的がありました。それは、多くの着付けの生徒さんから「せっかく着物を習っても着て行くところがなくて…」というお話を耳にしていたので、生徒さんにもご参加いただくということでした。イベントでは、皆さんの日本のお土産を展示させていただき、メインイベントとして西浦喜八郎先生に書道と華道をご披露頂きました。

Japan Nightでの書道のデモンストレーション

Japan Nightでの書道のデモンストレーション

以上、ほんの一部ではございますが、私のワシントンでの着物生活をご披露させていただきました。この文章がきっかけとなり、お一人でも多くの方に着物生活に興味を抱いていただければ幸いです。


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