人生茶の如し

友人たちとのお花見ティーパーティー。筆者は左から2人目

友人たちとのお花見ティーパーティー。筆者は左から2人目

「赤毛のアン」と紅茶の世界

「あなたが紅茶?コカ・コーラのほうが似合うわよ!」と周囲からの笑いを隠しきれない目に合うのは、いつものことだが、「だからこそ、紅茶なのだ」と、そのあと付け加えたい気持ちをいつも隠して一人、「赤毛のアン」の世界に入る。そばかすだらけの貧相な顔立ちに赤毛、しかも自分の出自もわからない孤児のアンが、いつも空想の世界で真珠のネックレスが似合うようなお姫様になった自分にワクワクしていた世界!

だから、ニューヨークからハワイに突然現れた、女優のように美しいティーインストラクター下条智恵子先生から、この暑いハワイで汗をひたいににじませながらレッスンを受け、足掛け二年がかりで紅茶インストラクターの免状を手にしたときは、迷わず私の紅茶教室はアンにちなんで「グリーンゲーブル・ティーアカデミー」にしようと決めた。

なぜなら私の紅茶の集いは、いつも野原で子犬たちがじゃれあうように駆け回っているアンが、大親友のダイアナとティーパーティーをする時だけは、まるで初めて貴婦人たちが精いっぱいおしゃれをして一張羅のドレスをまとい、気取ったアクセントでお話をしながら、品よく焼かれたクッキーをつまみ、おもむろに入れた紅茶をカップから小指を立てながらすするようなパーティーに似ていると思うからだ。はたから見たら、さぞかし滑稽なティーパーティーでも、本人たちにはまるで新鮮な体験となっているはずだとちょっぴり自負している。

「ダウントンアビー」と紅茶の世界

紅茶のマジックともいえるのは、何月何日はどこどこで、こんなテーマでティーパーティーをしますとお誘いすると、その日はテーマにあったお着物や色を合わせたお召し物など着て、昨日まではソファーで横になってスマホで話をしていた友人たちが貴婦人のようになっていそいそとお越しくださり、二時間後には楽しくおままごとを終えて満足した少女達が、お姫様になったような気分でお帰りいただけること!

さらに不思議なのが、主人。「今日は紅茶のレッスンにお客様がおいでになるわ」というと、いそいそと部屋をかたし、まるで英国貴族の館を舞台にしたドラマ「ダウントンアビー」の中に出てくるバトラーのように、棚に飾ってある60余のティーカップから、今日はこれでおもてなしと、カップを選んで危なげに出そうとする私のはしごを支えてくれる。ティーパーティーの時間にはお邪魔にならないようにと、ほかの部屋で静かにテレビをみる立派な紳士に豹変するのだ。昨日は私に、「お前の女友達との長電話はうるさくて、自分のテレビ視聴の邪魔になる」とがみがみ言った主人なのに、その電話のおしゃべりの相手が、実は、今日のお茶のお客様だとは、まったく気付いていない!

紅茶の旅

こんな私にとっていいことづくめのティーパーティーは、いつも快く素敵なマンション(邸宅)を開放してくださる方、本格的なプチデザートを焼いてくださるプロケーキデザイナーさんなどの応援団に恵まれ、かれこれ20回近くなった。お花見ティーパーティーは、桜をテーマに桜餅に合う紅茶に塩漬けの花を浮かし、かんざしをさして、ハワイでお花見気分!父の日には「美女と野獣」と題して、ご主人を魔法からといて王子様に戻すためのティーパーティー。珍しい南国の食材を使ったハワイならではのトロピカル・ティーパーティーなどなどーー。

キリンの「午後の紅茶」の監修で有名な磯淵猛・紅茶インストラクターとの紅茶の旅への参加も3回となり、英国、中国、スリランカで茶の産地、文化、お茶にまつわる世界の歴史も学べた。参加するたびに帰国後、「英国ロイヤルティーパーティー」、「年増美人お茶いれガールのティーパーティー」、「日本人の思い出の味、スリランカ紅茶ティーパーティー」など、旅の恥は掻き捨ての話から、その都度、現地で仕入れてきた紅茶を、驚きあり、ロマンあり、また笑いありで、さも知ったかぶりをしてちょっぴり講釈しながら、皆さんでワイワイとテースティングする。

私の勤めるオフィス・イベントで、帽子コンテストをとり入れたティーパーティーを開いたこともある。その朝、遅刻しそうに事務所に駆け込んだ私を迎えたのは、グレート・ギャツビー時代に戻ったかのように色とりどりの帽子をかぶった20人もの同僚たちが、誇らしげにすましてコンピューター・スクリーンに向っている光景だった!後でみんなで大笑い!

紅茶のマジック

磯淵先生の数ある著書の中に、「紅茶は人が飲むから素晴らしい」というのがある。つまり、ただの紅茶ですが、淹れる人と飲む人の心が繋がり、ただの紅茶ですが、人の喜怒哀楽に関りを持っているところがただものではないというのだ。

思えば紅茶を始めてから、同じ趣味を持ち、ともに一杯の紅茶を楽しんだ老若男女の友達、専門家さん達とのつながりが加速的に国を超えて広がった。

こう書いているところに、隣にいる主人が「君の明日の予定は?」と聞くので、「文学少女と文学青年のティーパーティーよ」というと、”GREAT!  HAVE  FUN !”と言い、微笑んでそそくさとベッドにはいった。売れない芸者だった私が、売れっ子芸者になったように、明日もお座敷がかかっている。これも紅茶マジックといえようかーー。


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